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2007年5月 1日 (火)

妄想劇場 ~紫煙の向こう2~

新兵のつまらんミスで、つまらん敵に捕まった。

まあいいか、とギロロは思う。
自分以外の小隊構成員は全て逃がしたし、敵の部隊には壊滅的なダメージを与えたはずだ。
俺の立場としては、なすべきことはなしたといえる。
それに不思議と死ぬ気はしなかった。

「捕虜の人権保障」など考えたこともない敵兵は、「尋問」の名を借りて拷問を繰り返したが、ギロロにとっては生ぬるいものだった。

こんなもので俺がケロン軍の情報を渡すなどと、本気で思っているのだろうか?
おめでたいことだ。
血の味を感じながら、にたりと笑ってやると、それまでギロロを痛めつけていた年若い兵士は、青ざめて出て行った。

「戦場の赤い悪魔に笑いかけられた敵兵は、二度と還れない」

大方、そんな噂でも思い出したのだろう。
あんな坊やに尋問を任せるなど、よほどの間抜けか人員不足かのどちらかだな。

しばらくすると、今度は年かさの上官らしき男が現れた。

「ギロロ伍長、戦場の赤い悪魔ともあろう方がいいザマですな」
「・・・・ふん」
「貴殿の処分が決まりましたよ。残念ながら、明朝、銃殺刑となります。どうやら貴殿には何のご協力も願えないようですので、我が軍としてはこれ以上尋問を続けるのは無意味だと判断しました」
「ああ、確かに無意味だな」
「今夜が最後のチャンスという訳ですよ。我が軍に協力の意志を示せば、処刑は再考されます。気が変わったら、いつでもそちらのボタンでお呼びください」
「・・・・くだらんな」

ニヤニヤと男が去っていく。悪趣味な男だ、とギロロは思う。
さて、これからどうするか。
ともかく処刑の際は外に出されるはずだ。
その時のワン・チャンスに賭けるしかないだろう。これといった策は無いが。

「んもー、何やってるでありますか!とっととトンズラでありますよ!」
目を閉じると、ぷりぷりと怒るケロロの顔が思い浮かんだ。
どうも、あいつのことを思い出すと緊張感が削げる。いいんだか、悪いんだか。

明くる朝、予告どおりにギロロは処刑場に引き出された。すでに銃殺の準備は整っているようだ。
「戦場の赤い悪魔」の最期を見ようと、好奇にかられた視線が集まり鬱陶しいことこの上ない。

事ここに至っても、まだ死ぬような気がしないな。妙なもんだ。

「目隠しを・・・」

おずおずと目隠しを差し出したのは、昨日の若い兵士だった。

「いらん」

そんなものをしたら、チャンスを見逃す。
しかし若者はその思惑を違ったように受け取ったらしく、小さな声でつぶやいた。

「貴殿のその勇気に、敬意を表します」

この坊やなら・・・と思い、俺は一つ頼み事をしてみた。

「すまんが、最後に一服させてくれないか?」

彼ははっとしたように、すぐに煙草を用意させ、そして俺に一本差し出した。
そっと火がつけられ、俺は青空に紫煙をはきだした。

いつもなら来るんだ。一服してると必ずヤツが・・・。


「ギ・ロ・ロ、見つけたであります!!」


ヤツは来た。俺は夢を見てるのか?
信じられないスピードでソーサーを操り、俺をかっさらうと、次の瞬間もう遥か上空にいた。
敵のお粗末な銃で狙い撃たれても、かすりもしない。

「んもー、何やってるでありますか!とっととトンズラでありますよ!」
「ケロロ、貴様何でここにいる?」
「ギロロがちゃんと帰ってこないからでしょ!他の兵士は皆ちゃんと帰ってきたのにさ!」
「俺が逃がしたんだっ!」
「あーたが帰ってこないんじゃ話にならないっしょ!迎えにきてやったんだから感謝するでありますよ!」
「隊長自ら、か?」
「おいしい役目は隊長のものであります!」

俺が全く死ぬ気がしなかったのは、こいつのせいだと思い知らされる。
悔しいが、こいつにだけは叶わない。

「しかし、よく俺の居場所がわかったな」
「ギロロ、合図送ってくれたじゃん」
「合図?」
「ギロロの煙草は、我輩を呼ぶ合図であります」
「いつから、そんなことになったんだっ!」
「はじめから」
「あぁ?」
「はじめからであります」

俺はもう返す言葉も失って、ただほうけていた。
先程もらった煙草はまだ俺の口にあり、そう短くなっていないそれは、ヤツの救出劇がいかに素早いものだったかを物語っていた。

「そうだ。ギロロ、我輩にも一本ちょーだい」
「あいにくだが、これ一本しか無い。何しろ処刑直前の捕虜だからな」
「んじゃ、それでいいや」

ひょいと俺の吸いかけを奪うと、ケロロはそっぽを向いて吸い出した。

「げっ、まっじーい。煙いばっかりで、不味いでありますよ、これ」
「だから、そんな質のいいものが捕虜に与えられるわけないだろう。文句あるなら捨てろ」

しかし、ケロロはそのまま吸い続ける。

「ゲホッ、煙いであります。あんまり煙くて、目にしみるであります」
「ケロロ・・・」

ヤツの大きな目から、ぼろぼろと涙がこぼれ続ける。
まるで俺が泣かしたみたいだ。いや、たぶん・・・俺が泣かしたのだろう。

「すまんな、あとで俺のとこに来い。とっときがあるから、いっしょにやろう」
「ヤッフーー!ギロロ、滅多に吸わないくせに、妙に高級なの隠し持ってんだよね。何で?」
「貴様を呼ぶ合図だからだろ?」

ケロロが笑う。涙をぬぐいもせずに笑う。

「もう、こんな泣くほど不味いのは勘弁でありますよ」
「了解だ」

ああ、こいつには。たぶん一生叶いやしない。
止まりそうもないケロロの涙が、何もかも洗い流してくれるようだった。


FIN



ギ口ケ口祭り参加作品。
かっこいいギロロとケロロを目指してみました。結果はどうあれ、心意気は買ってください ( ゜Д゜)y─┛~~ (2008.6.20)

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