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2008年2月19日 (火)

妄想劇場 ~雪の夜の話~

この辺りでは珍しいほどの雪が降った晩だった。「吹雪」と言ってもよいほどの雪が、ドロロにある出来事を思い出させた。

「そういえば、こんな雪の日に・・・命が危ないところを助けてもらったことがあったでござる」
「初めて聞いたね、その話」
小雪が無邪気な顔で興味を示したことが、ドロロの口を軽くした。
「今まで誰にも、小雪殿にも話さなかったことでござるよ」
「教えてくれるの?」
「あれはまだ、小雪殿や皆と共に忍野村で暮らしていた頃のこと・・・」

小雪に助けられたドロロは、地球を守るために、この少女と共に生きるために、来る日も来る日も山で修行を続けていた。
修行は厳しいものではあったが、辛いとは思わなかった。むしろ、この美しい自然と一体になれることが嬉しかった。

「一夜だけ、拙者が何も言わずに村に戻らない夜があったのを覚えているでござるか?」
「うん、覚えてるよ。ひどい雪の晩で、すごく心配だったから」
「あの頃の拙者は、山がわかっていなかったでござるよ。美しい山のもう一つの顔に気付かなかった。気付いた時にはもう遅くて、拙者は吹雪の中に一人完全に取り残されていたでござる」
「・・・それで?」
「雪は、美しけれど恐ろしきもの。雪を知らぬケロン人には、命取りになりかねんでござる。正直、あの時はもう終わりかと思った・・・」
「ドロロ・・・」

「意識を保つことすら怪しくなってきた時、一人の女人が現れたのでござる。初めは雪が見せた幻かと思ったが・・・その女人が拙者を山小屋まで導いてくれ・・・そして、拙者の命を救ってくれた」

Snowdream
(イラスト:もげさん)

火を起こしてもなお震えの止まらぬ自分の体を、その女が白い肌で温めてくれたことまではドロロは口にしなかった。
やましい事など何も無い。ただ拙者の命をつなぎとめるために、その柔肌で温めてくれただけのこと。だが小雪殿には言わない方がよいだろう。それに、あの夜の女人も、人に知れることなど望んではいまい。

―――今日あったことを、誰にも言ってはいけないよ。そうしないと・・・。

不意にドロロはどきりとする。
どうして、あの約束を忘れていたのだろう。そうだ、確かにあの夜のことは口止めされていた。だが、もう・・・。

「美しい女人でござった。雪のように白く、この世のものではないような」
「・・・・」
「あれは夢だったようにも思えるでござる」
ぱちんと火が爆ぜる音がした。

「・・・夢じゃないよ。言わないって約束したのに・・・とうとう話しちゃったね」
「こ、小雪殿?」
ドロロの瞳に写った小雪の顔は、今まで見たこともないほどに白かった。
鼓動が速くなるのがわかる。そんな、まさか・・・!

「ドロロが誰にも言わなければ、ずっといっしょにいられたのに」
「まさか小雪殿が、あの時の・・・!」
「さよなら」
「待つでござる!小雪殿!」
「掟なんだよ」
「掟など・・・!もう、忍野村は無いではござらぬか!」
「わかってる。それでも・・・この掟だけは守らなくちゃって思うの」
「小雪殿!」

突如部屋の中に吹き込む雪。
その雪がやみ、再びドロロが目を開けた時、小雪の姿は無かった。後に残るのは闇と静寂・・・。

ああ、僕はどうして間違ってしまったのだろう。
小雪殿になら話してもいいと思った。小雪殿にだけは、言っても許される気がした。
逆だったのだ。この少女にだけは、僕が約束をやぶる姿を、人を裏切る姿を、見せてはいけなかったのだ。

「小雪・・・」
どれほど悔いても、もうこの腕の中に彼女が戻ることはないのだろう。
「小雪殿・・・ごめんよ・・・ごめん・・・ごめ・・・こ・・・ゆき・・・」
僕が馬鹿だったせいだから、僕が一人になるのは仕方の無いことだ。だけど、僕のせいで彼女もまた一人になる。それが何よりも辛かった。
小雪・・・小雪・・・小雪・・・小雪・・・。
彼女のいない世界はどこまでも続く闇・・・。





―――ドロロ・・・ドロロ・・・ねえ、ドロロ!

「小雪殿・・・!」
汗びっしょりで起き上がると、小雪殿が心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「拙者はいったい・・・」
「ドロロ、すごくうなされていたよ。大丈夫?」
「あ、ああ・・・」
夢・・・なのか?どこから・・・?ああ、そんなことは今はどうでもいい。大切なことは。
「小雪殿。これからも拙者といっしょにいてくれるでござるな」
「ドロロ・・・泣いてるの?」
「どうか、いっしょに・・・」
「うん、ずっといっしょだよ・・・」
抱きしめてくれた小雪殿の手は雪のように冷たかったけれど。
「いっしょだよ・・・」そうささやいた吐息は、胸に染みるほど温かで、僕は涙が止まらなかった。


FIN



ドロ雪。雪女パロ。
初めて読んだ「雪女」の話は、怖くて綺麗で切なくて泣けた。
小雪の嬢の「雪」の字から思いついた話。ドロロがケロロ達と再会するちょっと前あたり。ドロロは雪くらい平気じゃん?とつっこまないでー。
追い詰められたドロロの内面は、一人称「僕」になると思うんだけど、どうでしょう。(2008. 2.14)

追記

「カエル注意報」もげ様にいただいたイラストを追加。
はう~、何て美しい・・・!感謝感激であります!(2008. 2.20)

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コメント

ドロ雪キター!!!
よ、呼び捨てですか?ドロロ君。ハァハァ。
この二人は、恋とか愛とか、そういうの超越した関係ですよね。ああ、いいなぁ。
あったまりました~。ありがとう!
妄想劇場、これからも楽しみにしてます。

>ぶうさん

楽しんでいただけたようで、良かった!
あの声で呼び捨てされたら、
ちょっとときめいてしまうと思いませんかv
ドロロと小雪も大好きです。
すごく自然にいっしょにいる感じがいい。

またイロイロ書きますので、お付き合いください。

こんばんはー。
ドロ雪!
なんかちょっぴり大人の雰囲気が漂ってませんか!?
…そんなことないですか。気のせいですか。
暖めてもらったことを秘めちゃうあたり、大人だなというかむっつr…。
(ダメな人間がここに)

実は。
アドレス部分になにやら入っているので、良かったら見てください。

>もげさん

ちょっと大人なのは気のせい・・・じゃなくて、仕様です(笑)
スルーされるかされないか微妙な程度に大人の雰囲気が出せたらいいなと思って。

ところで。
「なにやら」があまりにも素敵すぎるんですが!
きぃーやー、う、美しい!
えーと後でメールします。心を落ち着けてから!

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