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2008年2月28日 (木)

妄想劇場 ~サマー・オレンジ~

「む・・・?今帰りか、珍しいな」

日向家の女主人・秋が子供たちより早い時間に帰宅するのは、実に珍しいことである。
いつものように庭で焚き火をしていたギロロが最初に秋に気付き、何気なく声をかけた。

「あら、ギロちゃん。ただいま。特別に出張先から直帰になったのよ。夏美と冬樹は・・・まだみたいね」
「じきに帰宅するさ」
「そうね」

そう答えながら、当たり前のように横に腰を下ろし、焚き火に手をかざす秋にギロロは少々めんくらった。
その席はいつも夏美の座る・・・いや、そんなことはいいんだが。そういや、日向秋と二人きりで話すことなぞ初めてじゃないか?

「うふふ、あったかーい。こんな寒い日は焚き火っていいわよねえ」
「・・・芋も焼くか?」
「うん、お願いするわ」
夏美の炭水化物系植物好きは母親譲りだな、などとギロロが考えていると、秋が見透かしたかのように夏美のことを口にした。

「そういえば、夏美が生まれたのもこんな寒~い日だったな」
「夏美が・・・。そうか、夏美は冬生まれだな」
「そ。だから寒くてもあんなに元気なのかもね」
「ははは。そういえば・・・何故冬の生まれなのに、夏美の名前に“夏”とつけたんだ?」

地球生活も長い。
小隊の中では比較的地球事情に疎いギロロも、夏美の名前が四季の中で最も暑い季節・夏を表していることくらいは勿論わかっている。

「聞きたい?」
「あ?ああ・・・」
いたずらっぽい表情で、楽しげに秋は話し始めた。


「日向夏って知ってる?」
「ヒュウガナツ?」
「知らなくても無理ないわ。このへんじゃそんなにメジャーなフルーツじゃないもの。地球人だってあんまり知らないわよ」
「ほう、果実の名なのか」
「みかんの一種よ。ニューサマーオレンジとも言うんだけど、その名のとおり、夏に取れるみかんなの。甘味も酸味も優しい味で、私の好物」
「なるほど、好物の名を娘につけたのか!わかりやすいな!」
「うふふ・・・確かにそうだけど、もうちょっと続きを聞いてよ、ギロちゃん」
「・・・むう」

「あのね、夏美がお腹にいる時、私ひどい悪阻だったの。本当に何も食べられなくなっちゃってね。普通なら5、6ヶ月になれば落ち着くはずなんだけど、私の場合、出産直前までずっと辛かった」
「そうか・・・・大変だったな。ペコポンの女性の体のことなどまるでわからんが、出産というものが命がけの戦いなのは、おそらく宇宙共通だろう」
ギロロの真摯な言葉に、秋はこくりとうなずいた。

「臨月になって、これ以上体力を落とすわけにはいかなくて、お医者様にも『何でもいいから、食べられるものを食べてください』って言われて・・・」
「それで、ヒュウガナツか?」
「そう!本当なら、冬に売ってるものじゃないのよ。でもね、あの子達の父親が必死で探してくれたの。忙しいのに、日帰りで九州まで行っちゃって。『これなら秋にも食べられるだろう。俺にはこれくらいしかできないから』なんて・・・言っちゃって・・・」

空を見上げた秋が、その思い出をどれほど大事にしているかは、言わずとも伝わってきた。

「あの人の日向夏のおかげで、無事に夏美が生まれたの。だから・・・」
「いい名前だ。夏美という名は、とてもいい名だと俺は思うぞ」
「ふふ、ありがと」


夏美と冬樹の父親のことは、ギロロは一切聞いたことが無かった。ギロロだけでなく、小隊の誰も詳しいことは知らないだろう。
ただ、夏美も冬樹もごく幼い頃に亡くなったのだろうということだけは、何となく感じて取れた。それすらも、はっきり確認したわけではないのだが。

初めて秋の口から、夏美たちの父の話を聞かされ、「ああ、本当にいたんだな・・・」と当たり前のことをギロロは思う。

「その・・・夏美たちの父親はどんな男だ?」

ごく自然にその問いを口にしたギロロは、次の瞬間、自分は何と無神経なことを聞いているのかと後悔する。
「い、いや、スマン。別に無理に話さんでも・・・」

だが秋は、はにかんだように微笑んで答えた。

「素敵な人よ。一途で、不器用で・・・・宇宙で一番、私を愛してくれる。ね、素敵でしょ?」

そう言った秋の顔は、いつもの母親の顔でなく、まるで少女のようだった。
ああ、やっぱり夏美によく似てるなと、ギロロはぼんやり考えた。



しばしの静寂は、少女のはずんだ声でやぶられる。

「え?ママ?どうしたの、こんなに早い時間に帰るなんて!」
「うふふ、お帰りなさい、夏美」
帰宅早々、母の姿を見つけ、夏美は喜びで頬を染めている。

幸せそうだな、夏美・・・。
親子の団欒を邪魔すまいと、ギロロがテントに戻りかけると、秋がひきとめた。
「あら、待ってよギロちゃん。あのね、今ギロちゃんにお芋焼いてもらってたの。夏美も焼いてもらったら?」
「うん、私も食べる食べる!いいでしょ?ギロロ」
「お、おう・・・」
秋はいつのまにか母親の顔に戻っている。

「でも、ママとギロロの組み合わせって珍しいね。何の話してたの?」
「う・・・あ・・・」
「一途に愛してくれる男性が一番素敵だと、そういう話よ。夏美も将来のために肝に銘じておきなさいね」
ねっ?と秋にウィンクを飛ばされ、ギロロは何も言えなくなった。

機動歩兵・ギロロ伍長・・・・日向家攻略の日は、まだ遠い。


FIN



九州物産展で、「日向夏」という言葉を見かけただけで、ここまで妄想する自分は末期症状だと思います。
日向パパの情報って全然無いですよね?私が知らないだけかしら。
秋ママにベタ惚れの不器用な男だったらいいなあとか、そういう甘酸っぱい妄想なわけで。(2008. 2.28)

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コメント

わぁ~。母親目線SSだぁ!!
つわりとか、経験してるから出てくるんですよね。
そうかー、だから冬生まれなのに、夏美かー。
うちの子は夏うまれだからなつみだけど、あまりにストレートだから「夏」って字は使わなかったんですよ。
つわりの時に夏みかんかー、いいなぁ。
私はCCレモンでした(爆)

さりげなく一途な男をプッシュする秋ママ、いいなぁ。うんうん。
秋ママとギロロの組み合わせって、結構好きです。

私も秋ママとギロロの組合せ結構好きなんですよ。
接点あまり無いんだけど。
書きながら、ぶうさんのことをちょっと思い出してたので(娘さん、なつみちゃんだったなと思って)、反応よくて安心しました。

私は、悪阻の時期にふと食べたくなった焼き芋を夫が買ってきてくれなかったことをいまだに根に持っています。
(目の前を焼き芋のトラックが通ったのに!)
妊婦の言うことは聞くもんです。

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