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2008年3月20日 (木)

妄想劇場 ~キズアト~

日曜日、珍しくクラスメートの五月、弥生と出かけだした夏美は、ショッピングとおしゃべりを存分に楽しんでいた。
地球最終防衛ラインも、「フツーの女子中学生」する週末もあるのだ。


「あの・・・すみませんが、道を教えていただけませんか」

他愛も無い話をしながら歩く夏美達に声をかけてきたのは、背の高い初老の紳士だった。

「あ、はい。どちらに行かれるんですか?」
返事をしながら、その人の顔を見た夏美は、おや、と思った。

彼の顔には、大きな傷跡があったのだ。ちょうど左眼を斜めに横切るような目立つ傷。

(やだ・・・この人の傷、誰かと同じ場所)

赤い姿の居候、もとい侵略者のことを思い出しながら、夏美はもう一度そっと目の前の紳士の顔を見上げた。
眉間に刻まれたしわと鋭い目元も、ますます赤い居候を彷彿とさせる。

「奥東京フェイスビルという場所なんですが、ご存知ですか?1階は花屋になってるビルです」
「ああ、それならきっとあそこだわ。このへんで花屋さんてたぶん一軒だけだし」
「ご存知でよかった。どのへんになりますか?」
「えーっと、まず今来た道を少し戻っていただいて。それから左に入るんですが、んー・・・ここからだと何番目の路地になるんだろ。目印になるものなんてあったかな・・・」

我ながら説明下手だと自己嫌悪になった夏美は、助け舟を求めて五月と弥生を見たが、二人は「ここは夏美にお任せ」という顔で少し距離をおいている。

「えーっと、えーっと、もう!そうだ、そこまでいっしょに行きますよ」
夏美の提案に、紳士は驚いたように首を振った。
「いや、そこまでご迷惑をおかけできませんよ。大体の場所だけ説明してもらえたら、何とかなりますから」
「でも、いっしょに行っちゃった方が早いですよ。5分もかからないところですもん。ただ、ちょっとわかりにくいだけで」
「だが・・・」
「私達、別に急いでるわけじゃないですから。ね、行きましょう」
「そうですか。それは大変、助かります」
紳士はホッとしたように夏美の横を歩き始めた。五月と弥生も後に続く。

(ギロロも年取ったら、こんな感じかしら。まあ、あいつは宇宙人だけどさ)

ちらりと隣りを見ると、向こうも夏美の顔を見ていたらしく、ちょうど視線が合った。
それをきっかけに、彼は口を開いた。

「あなたは、私の傷が怖くはないのですか?」
「え?」
「私のこの傷を見て、怖がる人はとても多いのですよ。若いお嬢さんなら、なおさらだ」
「そ、そうなんですか」
夏美は初めて、普段は世話好きの友人達が、この道案内にあまり積極的でないことに思い当たった。

「でもあなたは、私の顔を見て傷に気付いた途端、その・・・笑ったでしょう?珍しい子だなと思って」
「ごめんなさい!私、笑ってました?そんなつもりはなかったんですけど」
「いや、悪い意味で言ったんじゃなくて。笑ったというか、笑顔になったような気がするんですが・・・気のせいでしたかな」

考えていたことを見透かされたようで、夏美はどぎまぎする。
でも、この人はこの傷のせいで嫌な思いをたくさんしてきたのかもしれない。変な意味で笑ったんじゃないことをきちんと伝えなくちゃ。

「あの、実は、あなたと同じ場所に傷がある人をよく知っているんです。傷以外は全然違うんですけど。あなたの顔を見てその人のことを思い出したから、それで勝手に親しみを感じて、笑っちゃったのかも・・・」
「ああ、なるほど。ご家族ですか?ご友人かな?」
えーっと、まさか、居候の宇宙人ですってわけにもいかないわよね。
「・・・家族みたいなものです」
「そうですか」
うなずいた彼の表情は優しかった。


「あ、この路地です。ここを入るとすぐに見えるはず・・・ほら、お花屋さんが」
「ビルの名前は・・・ああ、確かに間違いないようだ」
「よかった」
「本当に助かりました。皆さん、ありがとうございました」
「いえそんな、これくらい。じゃあ、私達はこれで・・・」

夏美達が会釈して立ち去ろうとすると、紳士は深々と頭を下げ、もう一言だけ笑顔で付け加えた。
「ああ、そうだ。お嬢さん、私と同じ傷をもつ方によろしく伝えてください」
「は、はい!」

大通りまで戻ってくると、五月が興奮したように口を開いた。
「何かさ、何かさ、かっこいいおじいさんだったね!」
「うんうん!背も高くて、きりっとした感じで!」
弥生も同じことを思ってたらしい。そんな二人を夏美は呆れたように見た。

「何言ってんのよ、二人とも。道案内、私だけにおしつけちゃってさ!てっきり、あの人のこと怖がってるのかと思ったわよ」
「怖かったわよ、だって・・・あの傷だし、目つきも鋭かったし」
「そうよ、ちょっとヤクザの親分に見えなくもなかったもん」
「それが夏美と話してるうちに、すごく優しい顔になったのよ」
「うん、笑顔になったら素敵な人だった」

笑顔になったら、か。そうよね、普段から笑顔でいれば、最初からもっと話しやすいのに。あの人も・・・あいつも。
そんなことを考えながら、夏美はギロロがごくたまにしか見せない、穏やかな笑顔を思い出していた。


「ただいま~」
帰宅した夏美が庭に目をやれば、件の居候は、飽きもせず銃を磨いていた。
また、あんな物騒なもの磨いてる。何が楽しいのかしら。

『・・・私と同じ傷をもつ方に、よろしく伝えてください』

そういえば、あの人そんなこと言ってたな。

「ギーロロ、ただいま」
「な、夏美。今帰ったのか」
「うん」
「な、何か用か?」

視線も合わさぬようにして、黙々と銃を磨き続けるギロロが、意外とちゃんと自分の話を聞いてくれていることを、夏美は知っている。

「うん、用ってほどじゃないんだけどね。今日、男の人に道を聞かれたの」
「なにぃ、男にっ!!!」
「・・・そこは別に反応するところじゃないでしょ?礼儀正しいおじいさんよ」
「スマン・・・それで?」
「その人ね、ギロロと同じところに傷跡があったの」
「ふむ、この傷か?」
「そう、それ」
「そうか。・・・それで?」
「それで?って・・・それだけよ。その傷見たら、ギロロのこと思い出したの。ちょうど、こんな風な長い傷跡で・・・」

夏美の手がすっと伸びて、すーっとギロロの傷を撫でた。

「おんわーっ!ななな夏美、な、な、何をする!」
手元の銃も取り落として、2、3メートルギロロは飛びのいた。すでに湯気を噴き始めている。

「えっ?ゴ、ゴメン!まずかった?傷を触られるのがそんなに嫌だとは思わなかったんだもの」
「い、嫌じゃない!嫌じゃないけど、それはダメだろう!」
「嫌じゃないなら、何がダメよ!わけわかんないこと言わないでよね!」
「ま、まさか、その男の傷跡も触ったんじゃあるまいな?」
「初対面の人に、そんなことするわけないでしょ!もうっ、変なこと言わないでよ!」
「だだだがしかし・・・」


庭でギャーギャー騒ぐ二人を、見つめる二つの影があった。

「タママ二等・・・赤ダルマと夏美殿の会話は、たまに尻がむずかゆくなるというか、小学生の痴話げんかみたいでありますな」
「さっすが、ペコポン事情に詳しい軍曹さん!わかりやすい例えですぅ~」
「最近のペコポンの中学生は、もっと進んでるっちゅーの」
「でも軍曹さん、ナッチーは中学生ですよ?」
「うむ、だから小学生レベルにしてるのは赤ダルマの方でありますな。ゲロゲロリ」
「伍長さんて・・・」

隊長と後輩から、呆れたような同情したような視線を送られたことも知らず、男は今日も侵略先の少女に振り回されていた。


FIN



こういうのも、「オリキャラ注意」とか書いとかないといけないんでしょうか。ただの通りすがりのじいさまですが。伍長と同じ場所に傷があるというご都合主義だけの。
脳内ビジュアルは、ちょっと年取った中田譲治さんにしようw
単にナッチーにすーっと傷を撫でさせたかったという、そんな話。(2008.3.20)

ちょびっとだけ修正。少し短くしました。それでも、もっと削ってすっきりさせたい。(2008.4.3)

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