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2008年4月 2日 (水)

妄想劇場 ~仮想未来~

「で、これは何なんだ?」

クルルズラボにまたしても増えた見慣れぬ巨大マシンの前で、ギロロの口から自然に疑問がこぼれた。

「タイムマシン」

「んなっ、なにぃ!クルル、貴様、ついに作ったのかっ?」

「・・・と言いたいところなんだが、タイムマシンとケロボールだけは俺にも作れねえ。こいつは未来シミュレータだ。未来世界に行けるわけじゃねえが、シミュレーションで仮想の未来世界を作り出す。それも、かなり高確率の予測だぜぇ」

「なるほど。・・・で、これは何なんだ?」

いつのまにやら、その未来シミュレータの一部に取り込まれて、いかにも怪しげなメットまで装着された状況でギロロは再び同じ質問をした。

「初めての被験体は~、ギロロ先輩って決めてましたぁ~」
「また俺かよっ!」
「適材適所って言葉があんだろ?」
「貴様っ!そういや、ケロロはどうした?ケロロはいなくていいのか?」
「隊長は新作ガンプラの発売日だとかで朝からウキウキ出かけちまったぜぇ~。呼べねえよ」
「貴様はどうしてそう、あのボンクラに甘いんだっ!」
「ま、いいんじゃねえの?現実のペコポンにはな~んの影響も出ない実験だ。この程度のシミュレーションなら隊長がいなくてもアリだろ」
「むう・・・」

「つーわけで先輩には、シミュレータが予測した15年後のバーチャル・ペコポンに行ってもらうぜぇ」
「・・・何で15年後なんだ?」
その質問で、被験体になること自体は認めてしまったようなものだ。

「妥当だろ?15年ありゃ確実に何らかの決着はついてるんじゃね?」
「ふん、願わくばもっと早くな」
「言うねえ。じゃ、そゆことで。ナビは任せな」
「ということは、貴様と交信は可能なんだな」

「まあな。だが未来シミュレーションはとにかく処理が重い。全ての映像情報、音声情報をこちらに転送するのは不可能だ。俺が受信できるのは、カメラさんと音声さんが拾った絵と音だけだぜぇ」
「カメラさんと音声さん?お、おい!民間人を同行させるのか?」
「くっくっく、ものの例えだよ。カメラさんはあんたの目で、音声さんはあんたの耳さ。いい絵、頼むぜぇ~」
「おいっ、クルル!ちょっと、待・・・」

「ポチっと~!」

次の瞬間、ギロロは消えていた。

「よいフライトを。くくーっ」




ギロロが次に目にしたものは穏やかな空だった。

0422

「ここは・・・?」

『20XX年3月XX日、PM5:00のペコポンだ。座標は日向家・・・の屋根の上だなこりゃ。天候は晴れか』
ギロロの頭にクルルの声が流れ込む。

「15年後の世界だな。すぐ調査にかかる」

『頼むぜぇ。思った以上にハードに負担がかかっている。そう長くはもたない』

その場から周囲360度を視察する。馴染み深いようで違和感のある風景。
妙に大きなビルが増え、そしてさらに高くなっている西澤タワー。

そのまま屋根から飛び降りたギロロは、ぎくりとする。
あるべき場所にそれが無かったから。

「俺のテントは・・・無いな」

『当たり前だろ。あと15年もテント暮らしする気かよ?』

わかっている。わかってはいるが。洗濯物は、いつもと変わらぬように風に吹かれているというのに。・・・いや、これも違う?

「どうやら、この家には幼い子供がいるようだな」

風に揺れる小さな服。この家の新たな住人。
まさか?と思いつつ、ギロロは玄関を確認する。

『表札はまだ“日向”のままか?』

「ああ。建物自体も見たところ変わっていないようだ。多少古びたがな」

『中も調べてくれ。あんたの存在はこの世界の住人には認識されない。周りを気にする必要は無いぜぇ』

ギロロが足を踏み入れた室内は、思ったよりは変わっておらず、見覚えのあるものがいくつもあった。ただ、そのどれもが年月を経て古びてはいたが。
そして見慣れぬ新しいソファやら冷蔵庫やらが当たり前のように置かれていて。
ケロロの「相棒」の掃除機も流石に買い替えられたようで。
何より、鮮やかな色の子供用の椅子や真新しいおもちゃが、部屋全体の雰囲気をまるで違うものにしていた。

やはり子供がいるらしい。年齢を考えるなら、夏美か冬樹の子供ということになるのだろうか・・・?

「家人は留守のようだ」

『ふん・・・隊長の部屋はどうなってる?』

何となくわかるような気はしたが、ギロロは「軍曹ルーム」に向かう。

「やはり・・・な」

軍曹ルームは無かった。
勿論、部屋そのものはあるが、ケロロの持ち込んだものは何一つ残っておらず、がらんとした空き部屋は普段使われている様子も無く冷えきっている。

『俺達の基地への入口はどうだ?』

「見てのとおりだ。例の冷蔵庫も無いし、超空間ゲートそのものが跡形も無く閉じられている。おそらくここには、もう小隊基地は無い」

『了解。室内はもういい』



無言で外に出たギロロは、考え込んだようにつぶやく。
「俺達の侵略は失敗したのか・・・?」

『そうとも言い切れねえ。静かなる侵略のパターンもあるからな。だが、少なくとも目に見える形での“支配と隷属”や“共存”は無さそうだ』

「ああ。というより、俺達ケロンの痕跡が全く感じられないんだ。勘だが・・・もうこのペコポンに俺達はいないと思う」

『・・・かもな』


誰かが、この家に近付いてくるのが見えた。

0422_2

あれは・・・夏美、と・・・子供?

『おい、何隠れてんだよ!あんたの姿は認識されないって言ったろ?』

「すまん、体が勝手に動いた」

物陰からそっと母子らしき二人を確認する。
間違いない。帰ってきたのは15年後の夏美だ。
いっしょにいるのは夏美の子・・・? 2、3歳だろうか。

20代後半になったであろう夏美は、ひどく綺麗で、そして穏やかな微笑みを浮かべていた。
おそらく、このペコポンの男と恋をし、結婚し、そして母となったのだろう。
我が子に向けたその笑顔を見るだけで、今彼女が満ち足りているのがわかる。
ああ、良かった。彼女はこの世界で幸せなんだ。

穏やかな会話が聞こえる。
「ママ~。あのね、今日ね、お花で遊んだの」
「ふふ、桜の花びらで遊んでたんでしょ?」
「うんっ、しゃ、さくらー」
「ほら、髪に桜の花びらついてるよ」

夏美が子供の髪からはずした花びらが風に乗り、吸い込まれるようにギロロの手に収まった。
そういや、夏美たちと花見をしたことがあったな・・・。
二人の姿が扉の中に消えてもギロロはそこを動けず、掌の中の一片をもう一度そっと見た。

『おい、そこの乙女。間違ってもその世界のものを持ち帰ろうなんて思うなよ。ただでさえ、ギリギリの処理なんだ。やばいぜ?』

「だれが乙女だっ!」

乙女だろ?
ギロロが慌てて捨てた花びらが飛んでいく様子を、クルルは苦笑しつつ眺めた。
そろそろ限界か。ハードも・・・ソフトも。

『初めての実験にしちゃまずまずだ。帰るぜぇ』

「わかった。少しだけ待ってくれ」



もう一度、自分のテントがあったはずの場所にやってきたギロロは、「それ」があることを確認する。
俺がいつも座っていた位置にブロック。何でこれだけ・・・?

その理由はすぐにわかる。

「ゴトン、ゴトン~♪」

まもなく現れた先ほどの子供が、そのブロックに座って遊び始めたから。

「何だ、おまえの場所か」

俺の姿は見えてない・・・んだよな?
そろそろと子供に近付き、観察する。
夏美によく似ている。いや、夏美以上に勝気そうな瞳だ。ソルジャーの資質は十分だな。

「夏美のことを頼んだぞ。俺はもういないようだから、守ってやってくれ、な」

本当はお前の父親に頼むべきなんだろうが。俺はこれでもやきもちやきなんだ。
苦く笑ったギロロの方を向き、幼子は次の瞬間ありえないことを口にした。

「・・・カエルしゃん?」

「お、おいっ、クルル!俺は見えてるのか?!」

『ありえねえよ!姿も声も、認識不可能なはずだ!』

「だが、今確かに・・・」

『大方、そのへんに本物のペコポンの蛙がいたんだろ。それより、いい加減切り上げるぜぇ』

「わーい、カエルしゃんだ!ママ~、来て~!・・・い・・・カエ・・・しゃん・・・・・・た・・・よ」

「おいっ、確認しなくていいのか!」

『長居しすぎだ。音声情報からやばくなってきてる。転送準備完了』

「だが・・・」

『ついでに、あんたの脳細胞への負荷も限界だ。廃人になりたいかい?』

「なっ、貴様!そういうことは先に言・・・」

『転送完了~』



ぐにゃりと視界が歪んだかと思うと、ギロロが次に目にしたものは、いつものラボの風景だった。

「戻ってきたのか・・・つぅっ」
頭痛がする。まるで泣きすぎた後のように。

「よお、お疲れさん」
クルルのその言葉と同時にギロロの体はシミュレータから自由になった。

「疲れたな、確かに」

先程まで視界と音声をギロロと共有していたクルルは、何と言っていいのかわからない表情になる。
この人は、どんな顔であの「未来」を見ていたのだろうか。

「まあその、これはただのシミュレーションだからよ」

「ああ」

「あんたが見たのは現実の未来世界じゃない。ただの可能性の問題だ」

「クルル、気にするな」

(・・・それは、俺のセリフだろ。言わねえけど)

「シミュレーションでも、バーチャルでも、あの未来で夏美は幸せそうだった。だからいいんだ」

本当に満足気に立ち去るギロロに、クルルはそれ以上何も言えずに見送った。
モニタには、ギロロが最後に見た「日向夏美の子」のあどけない笑顔が映ったままだ。

そうだ・・・最後に聞いたこいつの言葉。あれは何だったんだ?
どう計算しなおしても、先輩の姿を認識できた可能性は0なのに。このガキは何を見た?

クルルは一瞬思考を巡らしたが、すぐにお手上げのポーズでモニタを消した。
これはシミュレーションだ。不確定の未来、不確定の要素、聞き取れなかった言葉・・・これ以上とらわれるのは馬鹿げている。




庭に戻ったギロロは、いつもと変わらぬテントにどこか安心しながら、いつもの位置に腰をおろし武器を磨き始める。
ともかく「今」は、ここが俺の場所だ。

「あ、ギロロ。ただいまー」

15年後の世界で見た光景と重なるように、夏美が笑顔で帰ってくる。

「今帰りか・・・ん?桜が咲いたのか?」
「うん、通り添いの木がね・・・って、何でわかるの?」
「おまえの髪に桜の花びらがついてるからだ」
「え、本当?どこに?」

0422_3

しゃがみこんだ夏美に促されるように、ギロロはギクシャクと手を伸ばした。が、その手が髪に届くより前に、それは勝手にひらりと落ちた。

「今年は、花見とやらはしないのか?」
「・・・そうね、しよっか」

あとどれくらい、こんな時間があるのだろう。
柔らかな日差しの下で、今日だけは侵略のことを忘れてもいいだろうかと思った。


FIN



原案:もげさん
脚本(?):けろっと

もげさんのサイト「カエル注意報」の1周年に捧げます。おめでとうございまーす!
未来シミュレーションというもげさんの素敵なアイデアをうまく生かせたか不安ですが、ともかくノリノリで書きました。VIVA ギロ夏!(&クルル!)
書いてるうちに季節ものになってしまったので、とにかく桜が散り終わらないうちにもげさんに見せようと頑張ったよ!
こんなでよければ、お納めくださいませv (2008.3.29)


もげさんが素敵にイラストをつけてくださったので、挿絵付きでUP。
ああ何て素敵なのでしょう。泣けるー。
最後の場面なんて、しゃがんで目を閉じてギロロを待ってるんですよ、ナッチーは!
何だったら唇を奪ってもいいようなシチュエーションなのに、触れることもできないという・・・この意気地なし!(そういうふうに書いたのは私だけど)
もげさん、素敵な妄想とイラスト、ありがとうございました (2008.4.2)

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コメント

このスッキリしなさ加減がこのお話のホンワカ良い所なんでしょうが…
私はこの後、パパ=ギロロが登場すると信じてます!
だって、感じ得ない事を感じ取れたのはきっと血が繋がってるからなはず!
どこまでもギロ夏な私です。
アニケロ終了も久しい中お話しを読まさせて頂いて感謝です。

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