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2008年6月 7日 (土)

妄想劇場 ~優しい時間~

それは6月のとある日曜日。

日向家では、当番の夏美が鼻歌交じりに夕飯の準備をしていた。
いつもより多い品数。料理の本を見ながらの少々凝ったメニュー。
何となくいつもと違う様子をギロロは感じ取る。
別に夏美ばかりを観察しているわけではないが、気付いてしまうのだから仕方ない。

「夏美、お前何だか今日は張り切ってないか?」

思いがけず背後からかけられた声に、夏美は一瞬びくっとしたが、すぐにホッとした顔になった。

「なーんだ、ギロロか」
「いつもなら、本など見ずとも美味そうなものを作っているではないか」
「んー、あのね。今日は“父の日”なの。地球の風習でお父さんに感謝する日」
「父親に‥‥?」
日向家とはあまり関係なさそうなイベントに、ギロロは首をかしげる。

「だからね、普通のお父さんの分もお母さんの分も頑張ってるママのためにちょっとだけご馳走にしようかと思って。あ、ママには余計なこと言わないでよね」

母親に感謝を伝えたくて、でも気を遣わせたくなくて、ただ黙っていつもより凝ったメニューを用意する彼女が、健気で可愛らしく思えた。

「そうか、日向秋はいい娘をもったな」
するりと言葉がこぼれた次の瞬間、爆弾を落とされた。

「やだ‥‥今の言い方、何だかお父さんみたい」

オトウサンミタイ。

お父さんかよ!ショックでギロロは固まりそうになる。
惚れた女に父親みたいと言われるなんて。
そりゃ確かに実年齢の差は数えるのもバカバカしいようなものだけれど。いや、でも、それはないだろう。

必死で平常心を装い、のろのろと顔を上げたギロロは、夏美を見て、おや?と思う。
彼女は嬉しそうに口元をほころばせていた。
そうだ、「お父さんみたい」の言葉にからかいの響きは無かった。
もしかして嬉しかった、のか?

「おい、夏美。ちょっとだけここに座れ」
「何よ‥‥?」

夏美が大人しくソファに座るのを確認すると、ギロロはひょいとそのソファに上る。
そして真面目くさった顔で、夏美の頭をそっと撫でた。

「ちょっと‥‥何の真似よ‥‥」
「‥‥」
「もしかして、お父さんの‥‥真似‥‥?」
「いやその‥‥」
「バカ‥‥」

そう言って彼女は、顔を真っ赤にして笑った。
まるで父親に褒められた小さな子供のように。

この笑顔を見られたのは収穫だ。暖かい気持ちがギロロの胸に満ちる。
ほんの少し、しょっぱいものは混じっていたけれど。

「ギロロって優しいお父さんになりそうよね」
「何を言っとる!俺は息子にはビシビシ行くぞ。強い戦士に育てなくてはな」
「あはは、そうかも。でも娘には甘そう」
「娘でも同じだ。甘やかすのは本人のためにならん」
「ふふふ、そんなこと言いながらきっと甘くしちゃうと思うな」

仲のいい家族のような、甘ったるい会話に耐えきれなくなり、ギロロは叫んだ。

「もういいから、食事の仕度の続きをしろっ!」

「はぁーい」

その返事すら、父に甘える幼子のもののように思えて、気恥ずかしくなったギロロは逃げ出すようにキッチンを出た。


「お・と・う・さーん」
「ケロロ、貴様見てたのか!」
「まあね。‥‥らしくないことしてんじゃん」
「らしくない、か。確かにな」

もっとからかってくるかと思った幼なじみは、意外にも真面目な調子で先を続けた。

「お父さん、でいいのでありますか?」
「たまにはいいだろ。侵略はまた明日だ」
「いや、そういうことじゃなくてさ」
「そういうことだろ。俺たちは侵略者だ」
「へいへい。ま、夏美殿はああ見えてファザコンだもんね」
「‥‥何が言いたい?」
「べっつにー。やれやれ、おとーさんに怒られるからマジメに侵略でもしよーっと」
「おとーさん言うな!」

ケロロにあっさり立ち去られると不安になる。
そうだろう?そういうことだろう?
俺たちはこの星に侵略にきたんだ。家族ごっこをしにきたわけじゃない。

‥‥そうじゃないはずなのに。

「ギーロロ」
地球最終防衛ラインが、夜更けにこっそり俺のテントにやってくる。
「何だ、こんな遅くに」
「あのね、今日の夕飯、ママすごく喜んでくれた」
「そうか。良かったな」
「それと、昼間のアレ‥‥」
「アレ?」
コレか?とギロロが頭を撫でるジェスチャーをすると、夏美はこくりとうなずいた。
「ちょっと嬉しかった。でも皆には内緒だからね」
「当たり前だ。俺がからかわれる」
「ぷっ‥‥あっははははは‥‥そうよね」

仏頂面の宇宙人と、はじけるように笑う少女の二人を、いくつもの優しい瞳が今夜はそっと見つめていた。


FIN



日向家にはあんまり関係なさそうな「父の日」話で強引に一つ。
小隊メンバーも今日はからかわないで見てるだけ、という話。
夏美攻略の鍵は、父性じゃないかと睨んでおります。守ってあげたり、甘えさせてあげたり、叱ってあげたり。きっとそういうのに弱い子だと思うの。(2008.6.7)

ちりさんが、この話の1シーンを超可愛いイラストに描いてくださいました!うわーいvvv
必見の素敵イラストはこちらから!(2009.5.28)

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コメント

ギロロ、たしかに優しいお父さんになりそうですよね。むっつりして厳しいけど、強くて優しいお父さんに・・・
ケロロとギロロって、なんだかんだでいい幼馴染なんですね~。
友情がいいです

はじめまして、桁石スミオと申します。
以前よりお邪魔しておりまして、勝手ながら当方サイトよりリンクも設置させて頂いてましたが、遅まきながら本日初めてコメントを入れたいと存じます。
「優しい時間」の余りの素晴らしさに、激しく感動いたしました。妄想劇場のギロ夏エピソードはすべて拝読させて頂きましたが、けろっと様の書かれる物語はいずれも優しさと愛情に溢れております。ギロ夏スキーとして、大変に嬉しく思います。
本日のアニケロを観て相当に落ち込んだ気持ちに、一筋の光明と救いの手が差し出された感じです。
素敵な作品をありがとうございました。これからも寄らせて頂きますので、日常ともども頑張って下さいませ。ではでは、失礼いたします。

>伍長さん
ギロロって純なのにちょっとお父さんぽいなーと思いまして。
ケロロとギロロのコンビは大好きです。
ギロロの方が割食ってる気もするけど、意外とケロロもギロロのために一肌脱ぐこともあったりするような。


>桁石スミオさん
はじめまして!
もったいないようなコメントありがとうございます。嬉しいです。
リンクもありがとうございます!そちらのサイトものぞかせてもらいますね。
私もギロ夏スキーですが、書くものとしては割とぬるい感じなので、お褒めいただき恐縮です。
今回のアニケロ、まだ見てないんですよ。ちょ、ちょっと心配に・・・(^^;)
これからもよろしくお願いしますね!

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