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2008年10月11日 (土)

妄想劇場 ~来訪スパイス~

その日、ケロロ小隊は留守だった。

そんなことはおかまいなしに、来訪者はやってきた。

「やあ、こんにちは」
「え‥‥ギロロのお兄さん?!」

弟の冬樹も出かけていて、たった一人で来訪者の相手をすることになった夏美は、玄関先で顔をひきつらせた。

味方にすれば頼れることこの上なく、敵に回せば厄介なことこの上ない相手、ガルル中尉。
それでも以前ほどの恐怖を感じないのは、前回彼が「休暇」と称してやってきた時に垣間見せた「ギロロの兄」としての顔のせいだろう。

「えっと、その‥‥ギロロは留守ですけど。小隊全員でどこかに出かけたみたいですよ」
「知っていますよ。ケロン軍本部からの指令で、そろって訓練に行っているはずだ」
「え‥‥」

なら、何でわざわざこのタイミングで地球に来たというのだろう。
消えかけていた警戒心がざわざわと騒ぎだす。

「なら何で来た?という顔だね」

この人は鋭い。ギロロのお兄さんとは思えないくらい鋭い。
冬樹ならともかく、私がこんな人と駆け引きしようなんて無駄なことね。ならば、はっきり聞いてしまおう。

「どうして今日来たんですか?また休暇?」
「‥‥‥」
「それとも」
「‥‥‥」
「‥‥侵略?」
「‥‥‥」
  

返事は無い。
風が、ざわりと吹いた。
  


「‥‥休暇です」

がくりと緊張が解ける。

「何で、無駄にためるんですかっ!」
「ははは。いや、ギロロと反応が似てて面白いなと思って」
「せっかく休暇で来たって、今日は私しかいませんよ?」

面白そうに笑う姿が憎たらしいので、思いきりふてくされた顔で投げやりに言った。

「かまわない。今日は君に渡したいものがあって来たのだから」
「え? 私‥‥?」
「ああ、この前ギロロに頼まれたものと同じ、炭水化物系植物だ」
「この前と同じ?!」

冗談じゃない!あんな物騒なもの、いらないわよ!
心の声が聞こえたのだろう。またガルルは面白そうに笑う。

「フフフ、大丈夫。すでにケロン星で私と親父で始末したものの一部をお持ちしただけですよ。もう暴れることはない。さて、どこに置きましょうか?」

もう「切り身」なわけね。なら、いいか。
少し考えて、ギロロのテントのそばに置いてくださいと頼んだ。
どうせならギロロに焼いてもらいたいし、主が留守だったとしてもあの赤いテントのそばの方が、安心してこの人と話ができるような気がしたから。

「土産」をテント横に置くと、ガルルは当たり前のようにいつもギロロの座るブロックに腰をおろした。
つられて夏美も、隣りに座る。

「ありがとうございます。でも、何で私に?ギロロにあげればいいのに」
「ギロロにやっても君に焼いてやるんだから、同じだろう?」
「‥‥そうかしら?」

何か違う気がする。

「ケロン星にいた時のギロロは、別に炭水化物系植物に大した興味は無かったよ」
「それにしちゃ、すっごく焼き芋作るの上手よ?輝く黄金色、完璧な火の通り‥‥」
「フフ、それくらいは仕込んであるさ。あとは‥‥」
「あとは?」
「うじょいあいぽいぽ、だな」
「うじょ‥‥何?」
「どんな料理も美味くするスパイスですよ」
「へー。あいつ、そんな特別なもの使ってたのね。道理で美味しいと‥‥」

ぶはっという音とともに、ガルルが腹を抱えて笑っている姿が見えた。

「くっ、は、ははははは、いや、別に‥‥‥と、特別なもんじゃない。いや、特別と言えば‥‥‥くっくっく‥‥特別、だけどね」

よくわからないけど、からかわれてるのだけはわかるのよ!
明らかに不機嫌になった夏美に気付き、ガルルはようやく笑うのをやめた。

「悪かった。お詫びに今この炭水化物系植物を焼いてごちそうしよう」
「結構です!後でギロロに焼いてもらうから」
「ふむ。なるほどね。じゃあ‥‥」

次の瞬間、彼のまとう空気が変わった。

「本題に、入りましょうか」

ああ、やっぱりこの人は怖いと夏美は思う。

「日向夏美、君に確認したいことがある」
「‥‥何ですか」
「ギロロは、君の何なんだ?」
低い声がざくりと迫る。

「何って‥‥」

何なのかしら?そんなこと言われても困る。

「ギロロは、居候で、侵略者で‥‥」
「迷惑な相手ってわけだ?」
「‥‥別に。もう慣れちゃったわよ。こんな宇宙人だらけの日常で、何なんだとか言われても私にだってわからないわ」
「そうか、わからないか。じゃあ質問を変えようか」

ガルルが薄く笑う。

「以前あのイモの化け物が暴れた時、何で君はギロロを助けにきたんだ?」
「何よ、今さら。助けちゃいけなかったの?」
「侵略者を助ける、意図が知りたい」

侵略者ったって‥‥‥ギロロやボケガエルなんて、もう家族みたいなもんじゃない。
ギロロを助けるのに、理由なんて無いわよ。
それを言ったら、いつも私を助けてくれるギロロにだって、その理由を聞きたいもんだわ。侵略者のくせに。

頭の中で警鐘が鳴る。
この人はさっき何と言った?―――侵略者を助ける、意図が知りたい。
そうね、侵略者を助けるなんて考えてみればおかしな話だわ。疑念を持たれて当たり前かも。

疑念。‥‥‥誰に?

「‥‥あの時も言ったじゃない。働かざるもの食うべからず、なんでしょ?」
「そのために参戦したと?」
「そうよ」
「フフ‥‥聡い人だ。だが、そのためだけに民間人のあなたが危険に身をさらすのはおかしいとは思いませんか?」
「で、でも!」



「そいつは、そういう女なんだよ」

背後から、よく知る低い声が響いた。

「ギロロ‥‥!」

「思ったより、早く帰ってきたな、ギロロ?」
「ガルル、夏美に何の用だ。聞きたいことがあるなら、俺に聞けばいいだろう!」
「じゃあ聞こう。何故、侵略先の民間人である彼女が、おまえを助けるんだ?」

ギロロはじっと夏美を見るとため息をついた。

「そういう女だとしか、言いようが無い。無鉄砲のじゃじゃ馬さ。俺だけじゃないんだ。夏美は、誰のことでも体をはって助けようとする。ペコポン人だろうが、ケロン人だろうが」
「ほう」
「俺たち軍人から見ると馬鹿げて見えることさえあるが‥‥‥ともかく彼女は誰かの危険を黙って見ていることができない。ただ、それだけのことだ」
「‥‥なるほど」

「貴様が、夏美と俺たちケロロ小隊の馴れ合いを疑っているなら、お門違いだ」
「フフ‥‥‥いいだろう。そういうことにしておいてやろう」
「ケロン軍本部は、そのあたりを疑っているのか?」
「本部は関係ない。今日は休暇だ。俺個人が知りたいことを確認しにきただけさ」

ガルルは立ち上がり、飛行ユニットを装着した。

「‥‥帰るのか?」
「ああ。知りたいことは、何となくわかったから、もういい」
「え?もう帰っちゃうの?せっかくギロロも戻ってきたのに」
「言ったでしょう?今日は君に会いにきたのだと」
「何だと!!」
「ああ、ギロロ。ここにある炭水化物系植物は親父と俺からのプレゼントだ。彼女に焼いてやってくれ」
「は?」
「うじょいあいぽいぽ、忘れずにな」
「何だよ、それ?!」
「わからなかったら、クルル曹長にでも聞け。じゃあな。‥‥日向夏美。君も元気で」
「‥‥あ、はい。‥‥お兄さんも」

ほんの少し目を細めたガルルは、もう次の瞬間はるか上空にいて、すぐに見えなくなった。
  

「全く!何しに来たんだ?まさか本当にイモを届けにきただけじゃあるまいに!」

怒りながら、先程までガルルがいた場所にギロロが腰をおろす。
庭の風景に置かれた紫が赤に変わっただけで、その光景がとても自然なものに思えた。

「ギロロ」
「あん?」
「私、誰のことでも助けてるわけじゃないわよ。そこまでお人好しじゃないわ」
「‥‥」
「知ってた?」
「‥‥まあな」
「なら、いいけど」

少しだけ、自惚れてもいいのだろうかとギロロは思う。

「‥‥せっかくだから、こいつを焼くか?」
「うん、お願い。うじょいあいぽいぽも入れてね」
「うじょ‥‥‥だから何なんだよ、それは!」
「知らないの?どんな料理でも美味しくするスパイスですって」
「初耳だぞ」
「やっぱりからかわれたのかな。あ、クルルに聞けばわかるんじゃない?」
「ガルルの言った意味不明なことをクルルに聞くのか?」

そう言われてみれば、何となく怖い。

「‥‥聞かなくていいわ。ギロロのおイモ、もとから美味しいし」
「そ、そうか」

そのまま黙って火を起こす、強面のカエル。
いつもよりさらに赤みが増しているように見えるのは、たぶん気のせいじゃないだろう。


―――うじょいあいぽいぽ、もう大変♪

料理を美味くする特別なスパイスといったら「愛情」なのだが、彼女が気付くのはいつになるかな。
ケロン星に戻る船の中で、ガルルは忍び笑いをもらした。

FIN



かなり前に伍長さんからリクエストしてもらった「ガルルの出てくるギロ夏」をようやく思いついたので書いてみました。遅くなってすみません。
イモッシブル後日談的。ガルルの出てくる‥‥というか、ガルルばっかり目立つギロ夏って感じですが。ギロロちょびっとしか出てこないよ!
そしてうっすらクルルの影。
うじょいあいぽいぽ、もう大変♪は、ご存知のとおりクルルのカレーソングです。愛情ポイポイv
昔ガルルもあの歌を聞かされた(もしくは教えた?)という妄想。 (2008.10.11)

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コメント

こんばんは。
からかわれている夏美がおもしろいですね♪
クルルに聞いても、うじょいあいぽいぽの意味は教えてくれないでしょうね~。
・・・というか、何か庭の様子を見ていそうです
ギロロの愛情がつまった焼き芋を食べられる夏美は幸せですね

>伍長さん
リクエストしてもらってから、すっかり時間が経ってしまいました。すみません。
ガルルの出てくる・・・というと、イモッシブル話しか思いつけませんでした。
クルルならこっそり見てるかもしれませんね。トラブル大好きですから。
自分の名前が出てきて、チッとか言ってるかも。
焼き芋のシーズン来ましたね。またアニメや原作でギロロの焼き芋シーン出てこないかな~。

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