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2008年11月 1日 (土)

妄想劇場 ~BANANAの問題~

 
「いやーん、何で無いのよ!」

スーパーの生鮮食品売り場で、日向夏美は立ちつくした。
目当てのものは無い。品切れとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
とぼとぼと彼女は家路についた。

「ただいま‥‥」
「夏美、今帰りか」

迎えてくれたのは、いつもの赤い居候宇宙人だった。

「あー、ギロロ。バナナ持ってない?」
「バッ、バナナ!?な、ななな何を言って‥‥」
「なんてね。言ってみただけ。持ってるわけないもんね」
「‥‥バナナが必要なのか?」
「うん」
「イモならあるが‥‥」
「おイモじゃダメ。そりゃ、あんたの焼き芋は美味しいけど‥‥逆効果だもん」
「そうか‥‥何でバナナが必要なんだ?」
「べ、別に!大したことじゃないわよ!」

ばつの悪そうな顔で玄関に駆けこむ夏美を、ギロロは首をかしげて見送った。



―――さて翌日。
本日の買い物当番は弟の冬樹である。

「ただいま~」
「冬樹、お帰り~。買い物メモ、全部そろった?」
「何かバナナだけ売り切れだったよ」
「やっぱり~!あーん、バナナが無い~!」

がっくりうなだれる夏美を、冬樹とケロロは不思議そうに見つめた。

「姉ちゃんて、そんなにバナナ好きだったっけ?」
「はっ、まさか!我輩の持ちネタ、バナナの皮ですべる一発ギャグを夏美殿も狙ってるんじゃ‥‥」
「んなわけないでしょ!今、バナナダイエットが流行ってるのよ!」
「バナナダイエット?」

仕方なく夏美は説明する。

「そう。朝はバナナと水だけ、昼と夜は普通に食事して、寝る前4時間は何も食べないっていうお手軽ダイエット」
「え~っ、そんなもん効果あるでありますかぁ?」

ケロロがバカにしたような視線を向ける。

「どれくらい効果があるかはわからないけど、ミネさんの番組でも紹介されて、今大流行なの」
「ミネさんと言いますとまさか!『思いきったテレビ』のミネモソタ?」
「そうよ。そのミネさんよ」
「ミネさんの一言で、スーパーの品揃えが一夜にして変わるという伝説の男‥‥!」
「だ・か・ら!バナナが無いの!ボケガエル、あんただって、もう当分バナナの皮ですべるギャグなんてできないんだからね!」
「ゲーロー!何ですとーーー!!」

それは――― ケロロ軍曹にとって、あってはならない出来事だった。
バナナ、バナナ、バナナ、バナナ‥‥‥‥。
無い、無い、無い、無い‥‥‥‥。

「バナナの皮が無くなったら、我輩何ですべったらいーんでありますか!」
「知らないわよ!あんたはワックスでもコンブでも好きなもんですべったらいいでしょ!ダイエットにはバナナが必要なのよ!」
「ワックスやコンブじゃバナナほどの笑いがとれないであります!バナナ!バナナの皮であります!」

涙目のケロロを冬樹がまあまあとなだめる。

「軍曹、僕はコンブも結構いいと思うけど」
「冬樹殿!そういう問題じゃないであります!」
「そうよ!問題はダイエットなのよ!」
「バナナ~!!」
「バナナ~!!」

ケロロと夏美の叫びは、空しく宙にこだました。




数刻後。
ところ変わって、こちらはケロロ小隊秘密基地。

立ち直りの早いケロロは、新たな侵略作戦を思いついて小隊を召集していた。例によって1名お休みではあるが。

「というわけで!世間は今、バナナダイエットブーム!おかげで未曾有のバナナ不足なのであります!」
「宇宙人街の宇宙バナナまで品薄らしいですよ。てゆーか完売御礼?」

モアの報告とともに、スクリーンには次々に、バナナ品切れとなった市場が映し出された。

「‥‥ダイエットだったのか、夏美のヤツ。そうとわかってれば、俺は‥‥」
「ギロロ伍長、何ブツブツ言ってるでありますか?」
「い、いや何でもない。続けてくれ」
「ゲロゲロリ。この機会をペコポン侵略に利用しない手は無いであります!」

タママから質問の手が挙がる。

「利用といっても、どう利用するですかぁ?」
「もちろん!ケロンの科学力を使って、バナナを大量生産!それを市場で売って、侵略予算をがっぽがっぽ稼ぐであります!」
「おおーっ!」
「そんなうまくいくのか?」

ギロロは疑いの表情を浮かべた。

「少なくとも夏美殿はバナナ欲しがってるから喜んで買うでありますよ」
「う‥‥まあ、そうだろうが‥‥」
「あり?もしかして乗り気でない?」
「いや!そんなことはない!」
「ボクは食べ物使った作戦は大賛成ですぅ!」
「つーわけでクルル曹長!バナナ大量生産マシン作ってくれない?」

黄色い参謀はくくっと笑う。

「簡単すぎて涙が出るぜぇー。すぐにでも作ってやるよ、バナナンバナナとな」
「やっふ~!そうしたら我輩、バナナの皮ですべり放題!」
「すべり放題!?」
「いやいやいや違った!侵略予算がっぽりであります!」
「お、おう‥‥」

ギロロの心ここにあらずの相槌に、ケロロは眉を寄せた。

「‥‥ギロロ、今日ちょーっと変じゃない?」
「そ、そうか?」
「何かこう、目が泳いでるっていうか~」
「そんなことは‥‥」


「きぃーーーやぁーーー、何よコレ!!」

絹を裂くような悲鳴は、夏美のものだった。

「おい、スクリーン切り替えろ!」

次の瞬間映し出されたのは、日向家の庭。
そこでは‥‥緑色の「何か」がばっさばっさと暴れていた。

「ちっ‥‥まさか!」
そのまま、ギロロは飛び出した。

「うわ、もう行っちゃったよ。ギロロはぇぇ~」
「つか、オッサン何か心あたりがあるんじゃねえの?」
「ともかく、我輩達も現場に向かうであります!」
「はいですぅ!」




駆けつけたギロロは、嫌な予感の的中に舌打ちをした。
「おい、夏美!無事か!」
「ギロロ!無事だけど‥‥何なのよ、これ~。また、あんた達の侵略作戦?!」

夏美が指さす先には、植物とも動物ともつかぬ緑色の巨大生物が、その手‥‥いや葉をばさばさと振り回して暴れていた。

「スマン‥‥今回は俺のせいだ」
「あれ、いったい何なの?」
「宇宙バナナの亜種だ。普通の宇宙バナナはペコポンのバナナとほとんど変わらない大人しいものだが、こいつはどうやら‥‥」
「バナナって!あんた、まさか私が言ったから‥‥」
「たっ、たまたま特売してただけだ!」



―――実はギロロは、夏美にバナナのことを言われたその日のうちに、宇宙人街サイド6に出向いていた。

「おい、宇宙バナナあるか」

しかしモアの報告どおり、宇宙人街でもバナナは売り切れ。仕方なく帰ろうとしたその時に、少々怪しげな男が声をかけてきたのだ。

「兄ちゃん、宇宙バナナ欲しいのかい」
「ああ。だが、どうやらどこも品切れのようだ。いったい何があったのやら」
「もしかして‥‥ペコポン人の彼女にプレゼントかい?」
「別にそういうわけでは‥‥」
「ふふふ、隠しても顔に書いてあるよ。そういうことなら、これを持って行きな」
「何だ、これは?」
「宇宙バナナの新種の苗さ。ペコポンの土で育てりゃ一日で実がなるぜ」
「ふむ。新種か‥‥」

大丈夫なんだろうな?という目を向けると、男はにやりと笑って言った。

「味は保証する。宇宙バナナの中でも上物だ。それに、ペコポン人女性が欲しがってるなら、こいつの方が効果的だと思うがね」
「効果的?」

結局、ギロロはその苗を一つ買った―――。



今朝植えた苗はすでに数十メートルの高さに達し、しかも緑の葉をばさりばさりと振り回して暴れている。

BaaaaNaNannnnBooooooooooooooooooo!!

雄たけびとともに、それは巨大な黄色い物体を吐き出した。

「‥‥な、バナナだろ」
「‥‥バナナね」

吐き出されたものは、サイズはともかくとして1本のバナナだった。
たった今まで暴れていた本体の方は、役目を終えたかのように静まっていた。

「大型トラックくらいあるけど、あれ本当に食べられるの?」
「味は上物らしいぞ」

ギロロと夏美はそろりそろりと巨大バナナに近付いた。確かにバナナ特有の甘い香りがする。

「とりあえず味見してみるか」

ギロロがサバイバルナイフを突き立てようとした瞬間。
バナナはツルンととんでった。

「なっ‥‥飛行するのか?」
「くくーっ、あんたにしちゃ、おもしれえもん仕入れてきたじゃねえか。あの亜種は、食われることに抵抗するんだよ」

いつのまにやら背後にはクルル、ケロロ、タママ、モアがいた。

「しかも表面は異常にすべりやすいから、扱いづらいぜえ」
「食べられちゃうなんていやなこった、でありますな」
「まあ、上手く捕獲して皮をむくことさえできたら、味は確かに上物らしいがな。どーすんだよ、先輩」

「決まっている!俺が捕獲する!」

言うや飛行ユニットを装着すると、ギロロはバナナの後を追って飛び出した。

「で、あんたはどーすんだよ、日向夏美」
「決まってるでしょ。アレ出してよ」
「アレぇ?」
「パワードスーツよ!」
「くくっ、いいぜぇ。二人でとりやっこしてきな~」






―――もしもその時、夕暮れの空を注意深く観察している者がいたら、UFOだと騒いだかもしれない。
巨大なバナナは、鮮やかな黄色に夕陽のオレンジを映しながら、ふわりふわりと空を移動していた。
そして、さらにごく一部の者は、その飛行するバナナの後ろを追う、赤い小さな影にも気付いたことだろう。

「ドロロ。あれ、助太刀しなくていいの?」
「そうでござるな。‥‥‥いや、もっと頼もしい助っ人がもうすぐ来るでござろう」

ギロロは、巨大バナナに手を焼いていた。
別に危険というほどのものではない。こちらに危害を加えるわけでもない、大人しいものだ。
ただ、逃げるのだ。ビームライフルも、ビームサーベルもやんわりと跳ね除けて、するりするりと逃げて行く。

こんなものが食べたいわけではなかった。
手を焼いている自分が馬鹿馬鹿しくもある。だが‥‥こんなふざけたものを取り逃がしたままでは、戦士としてのプライドが許さない。
それに―――。

「ギロロ!」

「夏美?!何でおまえがここに!」
「いいから、とっとと片付けるわよ!」
「援軍はありがたいが、こいつは全くもって扱いづらく逃げるんだ。いくら地球最終防衛ラインのおまえでも‥‥」
「やってみなくちゃ、わからないじゃない!」

パワードスーツの夏美は、勝ち気ににやっと笑う。
ああ、この顔だ。この表情に俺は弱いんだ。

「よかろう。銃を持っているのか?」
「うん、黄色いのが貸してくれたわよ」
「ふむ。挟み撃ちでいってみるか。アレの向こうに回りこめるか?」
「勿論!」
「俺がこのまま追い立てるから、合図したら向こう側から撃て。当然するりと逃げるだろうが、俺がこちらで待ち受ける。上手くいったらお慰みだ」

滑らかな動きで夏美は巨大バナナのはるか前方に移動する。
ちょうどいい、この下は川原になる。見物人は最低限で済むだろう。

ギロロの攻撃をするりとかわしながら、それはまっすぐに夏美の待機地点に向かっていた。

「今だ!撃て!」

ギュワァァアン‥‥‥

奇妙な音とともに夏美の銃から放たれた光線は、巨大バナナの先端をとらえ、そのまま全体を包み込む。
次の瞬間バナナは黄色から暗褐色に色を変え、しゅるりと後退した。その先には、ビームサーベルを構えてにやりと笑う赤い姿。

「それでいい」

先程までとは違う、確かな手応えを感じつつ、ギロロはそれをまっすぐに切り捨てた。

「仕留めた‥‥わよね?」
「ああ。全くすべらなかった。その銃は何なんだ?」
「何だっけ?何とかコーティング銃って言ってたような‥‥」

Cコーティング銃。何でもかんでもチョコレート・コーティングする優れもの。
役立つことは滅多に無い。今回のような例外を除いて。

「まあいい。これでヤツも大人しく食われるだろう」
「待って、ギロロ。何か様子が‥‥」


その瞬間、巨大チョコバナナは、ポン!と乾いた音で破裂した。
破裂した後には、何千、何万というバナナ。勿論、普通サイズの。

数えきれぬほどのバナナが、ゆっくり、ゆっくりと川原に落ちていく。
ふわりふわりと降ってくるバナナは、遠くから見たら黄色い雪のようだったかもしれない。
地上に降り立ったギロロと夏美は、ただ無言でその雪を見つめた。

「ぷっ‥‥」
「くっ‥‥」

やがて二人は笑い出した。戦いの果てに手に入れた物ときたら!
笑い疲れた夏美が言う。

「ふふっ、冷や汗かいたわよ。ま、いいダイエットになったけどね?」

その言葉に、ギロロは宇宙人街のバナナ売りの「効果的」という言葉を思い出していた。
それにしても、何だってこうペコポンの女は痩せたがるんだ。ガリガリの夏美なんか見たくないぞ?

「別にやせる必要もないだろう。それくらいの方が俺は、か‥‥」
「か?」
(可愛いと思う、なんて言えるか!)

「い、いやその、それくらいの方が俺は、こ‥‥」
「こ?」
(好みだ、なんてますます言えるか!)

「何よ、はっきり言いなさいよ」
「そ、それくらいの方が俺は‥‥かっ、加速度が増すし!こっ、攻撃力がUPしていいと思うぞ!」
「‥‥あっそ」

ギロロの頭を夏美がぽくりと叩く。「可愛い」くらい言えないのかしらね、この赤ダルマは。

「それにしても、あんたがあんな妙なもの買うなんて‥‥やっぱり私のせい?」
「特売だったから気まぐれで買っただけだ!」
「特売ぃ?」

頑固に否定するギロロに、夏美は苦笑する。

「バカね」
「‥‥‥」
「こんなにあるんだから、もらっちゃうわよーだ」

夏美はバナナを一本拾い上げると機嫌よくギロロにウィンクを送り、手にしたバナナに軽くキスをした。

‥‥ちゅ。

「なっ‥‥なにを‥‥!!」

そのままギロロは―――盛大に湯気を出して気絶した。

「え? んもう、世話がやけるわね」
そう言いながら、意識のない妄想番長をひょいと回収した彼女の口元は、うふふと笑っていた。


「うふふ‥‥‥って、今の絶対、夏美殿が悪いよね?」
「悪いつか、エ口いよな。妄想番長には目の毒だぜぇ」
「伍長さん、絶対何か考えたですぅ」

巨大バナナとの攻防をモニタで見守っていたケロロは、いつもの強面ぶりも方無しに、大人しく少女に抱きあげられた友のために十字を切った。

「ギロロ‥‥惜しい男をなくしたであります」

「ところで隊長、バナナでがっぽり作戦はどうすんだい?」
「ゲーロー。どう見ても、このへん一帯はバナナ供給過剰でありますな」
「バナナを売っても、拾ってきたもんだと思われちゃうですぅ」
「仕方ないであります。また別の作戦を考えるでありますか」
「ちっ、しょーがねえなあ‥‥って、おい、どこ行くんだよ?」

うずうずとした顔で出かけだそうとするケロロに、クルルはツッコミを入れる。わかっては、いたが。

「いや、だって、ねえ?あんな大量のバナナ、ほっとけないっしょ!」
「軍曹さん、中身は僕が食べるから、思う存分バナナの皮ですべるですぅ」
「いやっふぅ~!!」

―――今日も侵略作戦はへっぽこで‥‥そして地球は平和だった。

「てゆーか、天下太平?」


FIN


2008年11月に拍手においていたもの。
異常なバナナダイエットブームで、売り場からバナナが姿を消した数日の話。あれ、9月末くらいでしたっけ?
たぶん半年後には意味不明になってる気がしたので、11月に無理やりUPしました!
最初は「まかり間違えばアニケロであるかも?」くらいの雰囲気を目指してましたが、気分を盛り上げようと「バナナの涙」を聞いてるうちに終盤微妙にエ口くなってしまったような。
実際、エ口いという感想をたくさんいただきました。ははは。(2008.11. 1)

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