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2011年1月 4日 (火)

妄想劇場 ~お年玉~

「クールル曹長!」
「…どーかしたんスか、隊長」
素っ気なく聞き返しながらもクルルにはわかっていた。
これはいつものろくでもない頼みごとがある時の「クールル曹長!」だ。

そして勿論、緑の隊長は予想を裏切らない。
「あのさー、お正月じゃん? 我輩、隊長として小隊の皆にお年玉ってヤツをあげたいんでありますよ」
「相変わらずポコペンの風習にどっぷりっスねえ、隊長?」
「ままま、別に悪いことじゃないでしょ。何つーの、こういうチャンスに隊長としての威厳とか威信とかステイタス的な何かをね、見せつけてやらんとね!」
「ふーん…ま、いいんじゃね?ほんで?」
「いや、だからさ」
「俺へのお年玉は?」
ひょいと差し出された黄色い手を見つめて、ケロロは頭をかいた。
「んもー、クルルくーん。そうでなくてー」
「そうでなくて?」
「皆へのお年玉を用意するのを手伝ってほしいんであります!」
やっぱりなと思いつつ、一応不思議そうな顔をしてみたりする。
「いや、その発想は無かったわ」
「えー、だってだって、お年玉といえば、隊長と参謀がくれるもんでしょ!」
「いやいやいや、そこは父ちゃん母ちゃんやじーさんばーさんだろ?」
子供のように無茶苦茶を言い出す隊長に、思わずまともなツッコミを入れてしまう。
俺様としたことが…とクルルは思う。ひねりがないぜ。

「だいたいなあ、お年玉なんて小遣いをポチ袋に入れてくれてやるだけだろ?何の手伝いがいるってんだよ?」
「だって、我輩お金ないもん」
「はぁ?」
お年玉をあげるけど、お金がない…だと。意味わかんね。
「侵略予算はこれ以上使い込めないしー、我輩のポケットマネーじゃ一人300円とかになっちゃうしー」
「遠足のおやつ代かよ」
「うん、だからね」
えへっと小首をかしげるポーズにいらっとするが、結局この隊長の頼みは断れやしない。
「ギロロとー、タママとー、ドロロにー、それっぽいお年玉の品を用意してくれない?」
そーっと差し出された千円札にクルルは頭をかかえた。
しかも、3人まとめて千円だ。3足組の靴下か。

「ね、お願いであります」
「…ちっ、しょーがねーな」
しぶしぶクルルは承諾する。どうせ断れやしないなら、とっととテキトーにやっつけてしまおう。
承諾を得た途端、満面の笑みでケロロが仕切りだす。
「んじゃ、まずギロロの分ね!」
「オッサンにお年玉か…似合わねえな」
そうは言っても隊長からお年玉なんぞもらったら、一番感動するのは案外あのオッサンかもな。
「うん、まー、ギロロが喜びそうなもんていったって、武器くらいでしょ」
「…だな」
「お年玉に武器ってどーよ」
「いいんじゃね? そんじゃ、マニア受けしそうな、ちょいレアなグレネードガンでも用意するか」
「おおっ、いいでありますな!」
「言っとくけど、スペックは期待すんなよ?」
「あ、いーの、いーの。ちょっと扱いにくいくらいがオタク心をくすぐるであります!」
いや、扱いにくい以前に、何たって予算たったの333円……ま、いっか。
「…了解。んじゃ、それっぽいの作るスよ」
「やっふー!よろしくであります!」

グレネードガンの材料になりそうなガラクタを漁りつつ、クルルはとっとと話を進める。
「で、次は誰のお年玉いっとく?」
「次はタママ二等の分かな」
「お子様にやるものは簡単じゃね? 菓子でもやっときゃ喜ぶぜ?」
「うん、我輩もそう思ってね。実はタママの分は用意してみたであります!」
「見せてみな」
「じゃかじゃーん!宇宙サンタブーツDX!」
…マジかよ。
「隊長…今時これはお子様でも喜ばないスよ?」
「えっ、うそ!我輩が子供の頃はお菓子の詰まったこのブーツをもらっただけでウキウキもんでありますよ?」
「いや、ジェネレーションギャップはさておき、年が明けてこれもらったら、ドン引きっスよ?」
「そ、そんな~」
あっという間に泣きべそ顔のおっさんに逆らえない自分が嫌だ。
「くっ……ま、これに詰め替えたらいいんじゃね?」
ため息をつきつつ「宇宙福袋」と書かれた袋を取り出したクルルは、その中にサンタブーツの中身をぶちまける。
「おおお、カレー博士あったまいいー!」
「あとはテキトーにアレンジしとくから、それでいいだろ?」
「ばっちりであります!」
もう泣きやんだ。…簡単すぎるだろ。

「あとは…ドロロ先輩か」
「うーん、欲の無い男なんだよねー。正直、ドロロへのお年玉が一番悩むであります」
「ドロロ先輩の好きなものねえ…」
とりあえず、「トモダチのケロロ君」が大好きなことは間違いないが…
「流石にそれはやれねーしな…」
「え、何が?」
「いや、こっちの話。ドロ沼先輩なら、毎度忘れられてっから、自分の分もちゃんとあるってだけで喜ぶんじゃないスか」
「そっか…」
「だから何でもいんじゃねーの?」
「じゃあ商品券とか…」
「ねーよ!」
ああ、またひねりもなくツッコミを入れちまった…これだから天然ボケは嫌だ。
333円の商品券なんかあるかよ。
「じゃ、じゃあ、コミックス『忍者ハットリくん』全16巻とか?」
「絶版、絶版!」
「えーっと、えーっと、そしたら…」
結局、「美しい地球」を愛する男のお年玉は、趣味の園芸セットになった。
しかし予算は333円……まあいい。俺は何とかする男だぜ?

数時間後、クルルがやっつけで作った「グレネードガン」と「お菓子満載宇宙福袋」と「趣味の園芸セット」を抱えると、ケロロはご機嫌でクルルズラボを後にした。
「お年玉~♪ お年玉~♪クルル曹長、ありがとーであります!」
確かに3点千円にしちゃあ上出来だ。
「ったく、新年早々、世話の焼ける隊長だぜえ…」
一人になったラボで、クルルはひと眠りすることにした。
疲れた…ともかくこれでしばらくは静かなはずだ。
そうだ、起きたらカレーにしよう。おせちもいいけど、カレーも…

そのままうとうとと気持ちよく眠りこけたクルルを起こすのも、勿論この男だった。
「やった!やったよ、クルルくーん!」
「俺、寝てるんスよ、隊長…」
「あ、ごみん。いや、さっきのお年玉、早速配ってきたんだけどさー、すんげー好評!我輩天才じゃね?」
天才なのは俺だろうと、半分眠った頭で考える。
「ギロロなんかさ、もうメチャメチャ感動しちゃって『ケロロ、お前の心意気はしかと受け取った!今年はこの銃で絶対に侵略しような!』とか男泣きしちゃってさー」
…ああ、予想通りだな。
「タママもね、『ぐ、軍曹さん…これは数量限定の宇宙福袋!僕のためにあの長蛇の列に並んでくれたなんて嬉しいですぅ~!」とか何とか勝手に盛り上がってくれたでありますよ」
…ま、数量限定には違いねーわな。
「ドロロに至っては、『僕のこともちゃんと忘れてなかったんだね、ケロロくん…!今年はいいことありそうだよ!』なんて、もう中身見る前から嬉し泣き」
…だろうな。

「クルルのお陰であります!ありがとーであります!」
素直に礼なんて言われても「どういたしまして」ってガラじゃない。
ひらひらと手を振って、ラボの奥にクルルが引っ込もうとした時、ケロロが慌ててその手をつかまえた。
「ちょ、ちょっと待って、クルル!我輩、クルルにもお年玉をあげたいであります!」
「…くれよ」
この隊長が自分を何で喜ばせるつもりなのか、興味はある。
しかし、ケロロはそのまま何を差し出すでもなくもじもじとし始めた。

「あの、えっと、でもね。さっきクルルに渡した千円が今の我輩の全財産だったであります」
「…ああ」
「その、だから、お金とかモノとかはあげられないんだけど…」
「……」
「クルルにあげるのは…」
消え入りそうな声になったケロロの顔がだんだん近付いてくる。
これは……


「…きゅ、休暇1週間…であります」


耳元でこそっと囁かれた言葉に脱力する。あ…ぶねー。
こんなおっさん相手に一瞬でも、これ何てエロゲ?とか思っちまった。
「休暇1週間か…」
「だ、だって他にあげられるもの無いし!」
「いいぜ」
「ちゃんと1週間は我慢するから!侵略メカ作れとか、面倒ごと何とかしてとか言わないから…え?」
「だから、いいぜ。ありがたく頂戴するスよ」
「…う、うん!そうしてちょうだいであります!」

ニコニコと帰ろうとするケロロの手を今度はクルルがひょいとつかまえる。
「ん?何でありますか?」
「隊長、アンタにもやるよ。お年玉」
「え?ホント?」
「ああ、やるよ。……休暇1週間」
「え」
「何か問題でも?」
「…あの、でも、それクルルが決めるの?一応、我輩が隊長なんだけど」
「くくっ、お年玉といえば、参謀がくれるもんなんだろ」
にやりとクルルが笑う。
ケロロは一瞬目をぱちくりさせて、それからやっぱりにやりと笑った。

「えーと、じゃあ……とりあえず、新春暗黒ピクトチャットでもやっとく?」



目が覚めると、ラボの冷たい床の上だった。
「夢オチ……じゃねえな」
隣りでは、緑の隊長がいぎたなく眠っている。
どうやら、明け方まで続いた暗黒ピクトチャット中に二人とも寝落ちしてしまったようだ。
外が妙に騒がしい。
「何なんだよ…」
モニタをONにすると、画面いっぱいに赤・黒・青の怒りに燃えた顔が映し出された。

「おい、ケロロを知らんか!
 あいつがよこしたお年玉のグレネードガン、5発に1発は暴発するロシアンルーレット仕様だぞ!
 ふざけやがって…あんなもん使えるかっ!!つか、どーせ貴様が作ったんだろ、クルル!」
…ったく、遊び心のわからないオッサンだぜえ。機動歩兵ならそれくらい使いこなせっつーの。

「軍曹さんがくれたお年玉の福袋、おかしいですぅ!
 中に入ってたお菓子全部、チョコレートやキャンディーまで激辛カレー味だったですぅ!
 それどころか、そばに置いておいたコーラまでカレー味になっちゃったですぅ!
 絶対クルル曹長が一枚噛んでるですぅぅ!!」
…ちっ。欲しいものが入ってるとは限らないのが福袋なんだよ、ガキ。

「どういうことでござるか!隊長殿にもらった園芸セットに入ってた苗を育てたら、
 あっという間に巨大に成長して、あっという間に人を襲い始めたでござる!!
 あんなものをお年玉なんて……お年玉なんて……ひ、ひどいよ~、ケロロく~ん」
…何だっけ。ああ。そういや、時間も予算もなかったから、植物兵器侵略セットを再利用して園芸セットにしたな。

モニタの向こうの3人はまだまだ言いたいことがあるらしく、怒りの形相でわめいている。
「…モニタOFF、と」
「ふあぁあ、どーかしたでありますか…」
「いんや、別に」
確か1週間は面倒ごとの尻拭いはしなくていいんだったよな。
「くっくっくー……いい正月だぜぇ」
嫌なヤツ上等。クルルのいつもの笑いがラボの中に響いた。

FIN


2011年はクルケロでスタートであります。
私のイメージするクルルはこんな感じ。ビバ!嫌なヤツ!
でもクルル騙されてるよね。正月に1週間の休みくらい、もともとありそうだもん。
カレー味コーラのくだりは、ペプシへのオマージュのつもりで書きました(笑)
ペプシならやりかねん。(2011.1.4)

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