妄想劇場 ~悪魔と蛙~

※記号的ではありますが、オリジナルキャラクターとして「悪魔」が登場しますのでご注意ください。
 オリキャラがお好きでない方はスルー推奨であります。





ある日悪魔が赤ガエルの前に現れてこう言った。

「おまえの願いを三つかなえてやろう」

赤ガエルは怪訝な顔で答えた。

「何だ、貴様?見かけんツラだな。どこの辺境惑星から来たんだ?」

翼と尖ったしっぽを持つ小さな悪魔は嫌な声でけたけたと笑う。

「残念ながら、俺はこの星の悪魔だよ。おまえらの言うところのペコポンの悪魔というわけだ」
「‥‥そうか、クルルが作ったんだな!」

一向に己の存在を認めようとしない石頭の赤ガエルに、悪魔はじれたような声を出した。

「全く物わかりの悪いカエルだ。いいから願いを言ってみろ!」
「おーい、ケロロ!クルルに何と言ってこの妙なのを作らせたんだ?ちっとは侵略の役に立つんだろうな?」

赤ガエルは悪魔をむんずとつかむと、仲間の緑ガエルのところに持っていった。

「何、ギロロ?」
「このバカげた悪魔とやらは、何なんだ?おまえが作らせたんだろう?」
「‥‥何言ってんの?」
「何って‥‥」
「だから、どれのことを言ってんの?」

首をひねった緑ガエルを見て、赤ガエルは表情を硬くした。
赤ガエルの掌の中で、今度こそ悪魔はげらげらと笑った。

「さあ旦那、わかったかい?俺の姿はあんたにしか見えない。俺の声はあんたにしか聞こえない。そこの間抜け面の緑には全く見えてないってわけさ」

「ギロロ、どうしたでありますか?具合でも悪いんじゃ‥‥?」

心配そうな緑ガエルに「何でもない」と言いおいて、赤ガエルは自分のテントに悪魔を連れ帰った。
幽霊やお化けの類は苦手な赤ガエルだが、全く怖いとは思わなかった。

「ようやくわかったようだな。さあ、三つの願いを言ってみな」
「フン、これでも軍人の端くれだ。うまい話には罠があるに決まってる。いったい、貴様の目的は何だ?願いをかなえて、俺に何を要求する?」
「見かけより疑い深い旦那だな」

悪魔はやれやれと話し始めた。

「いいか?俺たち悪魔は長いこと、この星の人間どもだけを客として扱ってきた。
 やつらの三つの願いをかなえてやる、その代償にやつらは死んだ時に魂を俺たちによこす。
 シンプルな取引だ。
 昔は、悪魔に魂を売ってでも地位や名誉、金や女を欲しがる人間が五万といたんでね。
 取引相手にゃ事欠かなかったよ」

「それで? 見てのとおり、俺はペコポンの人間じゃないぞ」

「ところが、この数百年の間に人間どもはすっかりすれちまって、悪魔と取引するやつがめっきり減ったのさ。
 背に腹は代えられない。最近急に増えた旦那みたいな『外』からの客もとろうかと思ってね。
 あんたは俺にとっては初めての『外』の客さ。
 要するに手慣らしだ。特別にお代は無しでいい」

こんな相手にまで「実験台」に選ばれたのかと、赤ガエルはうんざりした。
だが面白い、と思ったのも事実だ。

「本当に魂はいらんのか? いや、俺は魂なんてもの自体信じていないがな」
「ああ、魂はいらねえよ。第一、あんたは当分死なないようだしな」

ようやく商談に入れる、と悪魔は小躍りした。

「さあ、三つの願いだ!何にする?ただし、俺の魔力の効き目があるのはこの星の空間だけだぜ?」

赤ガエルは腕組みをした。いざこうなると、何の願いも出てこない。
緑ガエルならこんな時、いくらでも願いが言えるのだろうなとちょっとばかり羨ましくなった。

「‥‥思いつかん」
「頼むぜ、旦那。『外』の客の願いがどんなもんか知りたいんだ。何か無いのかよ」
「うーむ」
「金、地位、名誉ってのがよくある願いなんだが‥‥この星の金や地位には旦那はたぶん興味無いだろ?」
「確かにな」

悪魔は思いついたように言った。

「そうだ、あんたは軍人だろう?その任務をちょちょいのちょいと終わらせるのはどうだい?」
「‥‥俺の任務は、ペコポン侵略だ。この星がケロン人のものになってもいいのか?」
「悪魔がそんなこと気にするかよ。じゃあ、一つめの願いは地球侵略でいいな?」

赤ガエルは渋面を作った。こんなヤツに頼んで任務を遂行するのなど真っ平だ。

「いや、ペコポン侵略は俺たちの手で行うべきものだ。貴様の助けはいらん」
「そうかい? しばらくあんたらを観察していたが、大分手こずってるように見えたがね」
「うるさい!」
「特にあの緑の大将、アレが隊長なんだろう? 本当に侵略する気があるのかねえ?」
「‥‥‥」
「ああ、そうだ。あの隊長が任務だけを考えるようにしてやるよ」
「何だと?」
「この星の人間にもこの星の玩具にも興味を失わせればいい。さぞやお役目熱心になるだろうぜ」

悪魔の言うことは正しいだろうと赤ガエルは考えた。
だが、そんなふうになってしまった緑ガエルの顔など、見たくもなかった。

「余計なお世話だ。あいつはアレでいいんだ」
「そうかい?旦那は甘ちゃんだねえ」

赤ガエルにぎろりと睨まれた悪魔は、方針を変更することにした。
もう一つ、彼が欲しがりそうなものに心当たりがあったからだ。含み笑いをして悪魔は言った。

「女はどうだい?」
「下衆なことを言うな!」
「あの、赤毛の小娘の心を願えば簡単に手に入るんだぜ」
「夏美のことか‥‥?」
「そうだ、その夏美という娘をあんたに夢中にすることもできる」

赤ガエルの心は初めて揺れた。
自分で手に入れられるものなら、悪魔に頼むことなど無い。
だが彼女の心は、彼の力では決して手に入らないもののように思われたのだ。

「だが、夏美はそれでは幸せではないだろう‥‥?」

赤ガエルの瞳に罪悪感の迷いを認めて、悪魔は大いにに喜んだ。
知ってるかい?悪魔はこんな瞳が大好きなのさ。

「惚れた男に想われて生きるんだ。幸せに決まってるじゃないか」
「惚れた男?」
「ああ、あんたさえ望めば、彼女はあんたにベタ惚れさ」
「しかし‥‥」
「ならばこうしよう。今日一日、彼女はあんたに夢中になる。これが一つめの願いだ」
「今日一日?」

悪魔は親切顔でこう言った。

「そうさ、一日限りの夢と思えば、そう申し訳なく感じることもないだろう?」
「う、うむ‥‥」
「もし気に入れば、2つめの願いで『一日』を『一生』にすればいい」
「そんなことにはならんと思うが‥‥」
「よし、一つめの願いは決まりだ。夏美という娘の心を今日一日この男のものに!」

今度こそ赤ガエルが文句を言わないことを確認すると、悪魔は何やら呪文を唱えた。
唱え終わると、悪魔は実に嬉しげに微笑んだ。

「まもなくだぜ、旦那?」

次の瞬間、赤ガエルが望んでいた声がした。

「ギロロ。入るわよ」

テントにひょいと入ってきたのは、愛しい赤毛の娘だった。
寒空だというのに、彼女は頬を染めてスクール水着を着ている。赤ガエルの好みに合わせたに違いなかった。

「な、ななな、夏美?どうして、ここに‥‥?」
「まあギロロ。自分の恋人に会いに来るのに理由なんているかしら?」
「こっ、恋人!」

自分が望んだこととはいえ、あまりの幸福に赤ガエルは目がくらむようだった。

「ねえギロロ。あなたの望むことなら何でもするわ。お風呂にする?ご飯にする?それとも‥‥」
「そそそそれともっ‥‥!」
「ほ・ふ・く・ぜ・ん・し・ん?」

「恋人」のあまりの可愛らしさに、赤ガエルは我を忘れて彼女を抱きしめようとした。
気を利かせたらしい悪魔の姿はもうどこにも無かった。

「なっ、夏美ぃ!」
「なあに、ギロロ?大好きよ」

ああ、何てことだろう。その瞬間、赤ガエルは娘の瞳を見てしまったのだ。
あれほど生き生きと輝いていた、愛しい娘の瞳には全く光が無かった。
人形の瞳と同じだ。自分では何一つ考えていないということが、嫌になるほどよくわかった。

「夏美‥‥」
「なあに、ギロロ?大好きよ」

よく似合うと思っていたスクール水着は、もう一度見ると何だかとても寒そうだった。
彼女が自分の意志で、これを着たはずがなかった。

「‥‥すまなかった」

赤ガエルは、悲しげに娘の頬をなでると、悪魔を呼んだ。

「悪魔よ、2つめの願いだ!」
「思ったよりも早かったな、旦那。やっぱり一日こっきりじゃ惜しくなったんだろう?」
「この娘をすぐに元に戻せ」
「正気かよ?」
「勿論、正気だ。さあ、今すぐ元通りに!」

悪魔は舌打ちをすると、先ほどよりも短い呪文を唱えた。
とたんに娘は元通り。赤ガエルのテントに、娘の叫び声が響き渡った。

「いやぁあああああ!何で私、こんなかっこしてんのよ!!」

わけがわからないやら恥ずかしいやらで頭に血が上った娘は、とりあえず目の前にいた赤ガエルを平手打ちした。
やつあたりなのだが、後ろ暗いところがある赤ガエルは文句一つ言わなかった。ただ「風邪を引くから早く服を着ろ」とだけ伝えるとテントを出た。
娘は首をひねりつつ自分の部屋へと戻っていった。

「全く、今まで大勢のバカな人間を見てきたが、あんたも負けず劣らずの大バカだ!俺はかなえてやった願いを取り消されるのが一番嫌いなんだよ!」

悪魔がわめいた。赤ガエルは黙って何事か考えているようだった。
その姿を「後悔」と見てとった悪魔は、鷹揚な態度でこう告げた。

「まあいいさ、三つめの願いがある。最後だぜ? 今度こそうまくやれよ、旦那」

しかし赤ガエルには、もう自分が欲しいものは何も無いように思われた。
そして、想い人に対して自分がしでかしたことへの埋め合わせができないものかと考えた。

「俺がどんな願いを頼もうとも、俺の魂をとることは無いな?」
「ああ」
「そして、他の誰かの魂をとることも無いな?」
「ああ」
「では‥‥三つめの願いだ」

悪魔は舌なめずりをした。

「さっきの娘の願いを一つかなえてやってくれ。ただし、彼女が不幸になるものはダメだぞ」

「‥‥何だって?」

悪魔は何かを聞き間違えたのかと思った。だが、それは聞き間違いではなかった。

「彼女を不幸にしないという条件付きで、彼女の願いを一つかなえてやってくれ」
「そんな、バカげた使い方をするのか?」
「何か問題でも?」
「問題は無いが、俺は『外』の客を相手にする自信が無くなってきたよ。だが、あんたの願いをかなえよう」

悪魔は煙のように姿を消した。

「これでいい。夏美なら俺のようなバカげた望みは言わないはずだ」

しっかり者の彼女は何を望むだろうか。
母親とのんびり過ごす休日か、ほんの少しのダイエットか‥‥ 623のサイン色紙じゃあるまいな。
    

その時、二階にある赤毛の娘の部屋から叫び声がした。

「ぎぃいいいいいいいやぁああぁぁああああぁ!!!」

しかしそれは、娘の声ではなかった。

やがてドスドスと怒りの足音を響かせて、娘が階下に降りてきた。

「こんのボケガエル!こんなヤツを使って、今度は何を企んでいるのよっ!」

娘が片手でがしりと掴んでいるのは、間違いなく先ほどの悪魔だった。
容赦ない締め上げで、悪魔はキーキーと哀れな声を出していた。

「ボケガエル」と呼ばれた緑ガエルは、やはり今度も首をひねるしかなかった。
彼には悪魔の姿も声もわからないのだ。

「夏美殿‥‥何を言ってるでありますか?」
「とぼけんじゃないわよっ!こいつのことよ!どうせまたくだらない侵略作戦なんでしょっ」
「姉ちゃん、本当に何言ってるの‥‥?」

騒ぎを聞きつけてやってきた、彼女の弟も怪訝な顔を見せるばかりだった。

「何言ってんのよ、冬樹?このへんてこりんな悪魔っぽいのが見えないの?」

赤ガエルはマズイと思っていた。まさかこんな騒ぎになるとは思わなかった。
いや、娘の性格をよくよく考えてみれば、こうなることは目に見えていたのだ。

「ああっ、赤の旦那!助けてくれよ。このおっかねえ娘に俺を離すように言ってやってくれ!こいつの願いなんか聞けるもんか!」

赤ガエルの姿を見つけた悪魔は、必死で助けを求めてきた。
娘もまた、赤ガエルをじっと見つめた。

「ギロロ? アンタには、この変なのが見えるの? ていうか‥‥まさか、アンタの知り合い?」
「知らんな!」

赤ガエルは決して嘘つきではなかったが、最低限の危機回避能力は身につけていた。
100人の男が同じ立場に置かれたなら、100人ともが同じように答えただろう。

哀れなのは悪魔だった。

「あんまりじゃねえか、赤の旦那!あんたに言われて俺はこの娘のところに来たってのに!」
「ギロロ‥‥?本当に知らないの?」
「知らん!」
「畜生!だからスクール水着のまま、そばに置いておけと言ったんだ!」
「そういえば、さっき私、スクール水着でアンタのテントに‥‥」

「悪魔よ、三つめの願いだ!全てを無かったことにして、今すぐ消え失せろ!」

赤ガエルの願いに、悪魔は「ありがてえ」とつぶやくと、煙のように消え失せた。
   

「えーっと、何の話をしてたのかしら?」
「よくわかんないけど、夏美殿に怒られてたような気がするであります」
「僕も思い出せないや。変なの」
「あー、ちょっとばかりいざこざがあったが、誤解だから忘れようとか、そんな話じゃないか?」
「ま、思い出せないくらいだから大したことないでありますな」
「そうね」


悪魔は大層憤慨していた。
長年悪魔をつとめてきたが、こんな酷い目にあったのは初めてだ。
もう二度と甘い顔は見せない。次の客で元をとってやる。

その時、悪魔のしっぽをむんずとつかんだ者がいた。

「何だこいつ?」

それは黄色いカエルだった。
何だか親しみを感じる雰囲気に、悪魔は今度こそ上手くやれそうな気がした。

「おまえの願いを三つかなえよう」

とたんに黄色いカエルはにたりと笑った。

「三つだなんてケチ臭いこと言うなよ、相棒。たっぷりと付き合ってもらうぜぇ。くーくっくっくー」

いつの間にやら、悪魔は電気仕掛けの妙なカゴに封じられていた。
ここから出られたなら、もう二度と「外」の客には手を出すまいと悪魔は嘆いた。


FIN


寓話っぽい感じを目指してみました。イソップとか。グリムとか。(だいぶ違う!)
教訓: 悪魔が悪魔を客にとるものではない。  (2009.1.10)

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