妄想劇場 ~みやげ~

「こんなものは、彼は喜ばないかもしれんがね」

惑星調査を終えたガルル伍長の掌には、白い小さな宇宙サンゴがあった。
土産物屋に売っているような磨きあげられたものではない。ガルル自身が拾ったものだ。

その美しい星の調査は、まるで「休暇」のような穏やかな日々だった。
こんな平和な任務は、最初で最後だろう。
美しく穏やかな「海」
その波打ち際で見つけた小さな宇宙サンゴがあまりに綺麗で、ガルルはそれを土産にすることにした。

子供はこんなものが好きなんだ。‥‥普通の子供は。


ケロン軍本部に帰り着くと、ガルルは「上司」の部屋に顔を出した。
自分よりずっと幼い、まだしっぽすら取れていない上司。
普通の子供とは全く違う。だけど勿論大人ではなく。
どう接してよいのか迷うところではあるが、時には子供扱いも必要なのではないかとガルルは思う。

「ガルル伍長、ただ今戻りました」
「‥‥フン」

幼い子供のようなクルル少佐はちらりとガルルを見ただけで、興味無さそうにまたキーボードを叩き始めた。

「任務は滞りなく終了。非常に美しい星でした」
「くくっ、じゃあ、じきに上層部のじいさん達のリゾート惑星になるな」

子供の発言にしては、的を射すぎている。ガルルは苦笑した。

「つまらないものではありますが、少佐に土産があります」
「土産‥‥?」
「こちらです」

ガルルは、宇宙サンゴをクルルの掌にそっと載せた。

「‥‥宇宙サンゴか」
「ご存知でしたか」
「当たり前だろ、それくらいのこと。だが‥‥」

本物を見たのは初めてだ、とクルルはぼそりとつぶやいた。
その顔に、一瞬子供らしい喜びを見たような気がして、ガルルはホッとした。

「案外、重いもんだな」
「そうですね」
「確かにあの星系は宇宙サンゴの生息地として有名だ」
「ええ、調査先には大小あわせて二十以上の珊瑚礁が‥‥」
「22の珊瑚礁があるはずだ」
「‥‥はい」
「そして、このサンゴは白い。最近問題になっている白色化現象の影響だろう」
「そう‥‥かもしれません」

サンゴを見つめるクルルの表情はもう子供のそれではなく、科学者のそれで。
ガルルはほんの少し残念な気持ちでため息をついた。

「それで、こいつはこれで大丈夫なのか?」

次の瞬間、クルルは顔を上げて、ガルルに問いかけた。ガルルには意味がつかめない。

「は? 大丈夫‥‥と言いますと?」

「だから!このまま空気中に置いておいて大丈夫なのかってことだよ。
 早く、あの星と同じ水質の水に入れた方がいいんじゃないかって‥‥」

ガルルは唖然とクルルの顔を見つめた。
まさか、この人が‥‥? そんな思い違いを‥‥?

「あの‥‥申し訳ありません、少佐。これは浜辺で拾った、いわば宇宙サンゴの死骸でして。
 もう生きてはいないのですが‥‥」
「‥‥そうか」

ガルルはこの時初めて、クルルの子供らしい顔を見た。失敗を見られた子供の恥ずかしそうな顔を。

「あの、少佐? もしかして育てる気満々でしたか?」
「‥‥‥」

答えずとも、赤く染まった顔が全てを物語っている。
そうだ。普通の大人の100倍もの知識があろうとも、まだまだ幼い彼が知らないことは多い。
白色化現象まで知っていても、本物のサンゴに触れるのはこれが初めてなのだ。

「いつか生きてるサンゴを手に入れる機会があったら、お持ちしますよ」
「フン」

プイと背を向けたクルルの背中が、いつもより子供らしく見える。
ガルルはこっそり笑みをもらした。


FIN

ちびケロ祭り投稿作品。素敵共鳴イラスト描いてもらって嬉しかったv
実はこの話、ほぼ実話だったりします。クルル:息子、ガルル:私で。
全ての日常は妄想の糧に!(2009.4.23)

妄想メイツ☆

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